たとえば、グデイやNaNoMoRaLの音楽性は特にコアでアンダーグランドな音楽性というわけではないし、都内を中心に音楽CD・レコードチェーン店を経営するディスクユニオンが運営元であるSW!CHは非常にオーソドックスなオールドスクールなアイドルポップスと言っても差し支えのないような楽曲のグループである。
それらのグループの場合、メンバーが過去にSAKA-SAMA、エレクトリックリボン、あヴぁんだんど、ナト☆カン、グーグールルといった先の定義に当てはまるようなグループに在籍したことがあり、対バン層、人脈、ファン層的には以前在籍したグループからのものを引き継いだ部分があり、そういった部分で同一界隈と考えることができる。
音楽性ではなく、活動範囲によって界隈が既定されているということであり、現場的な話である。
この本は実際のところ「楽曲派」という概念に真っ向から挑んだものではなく、タナカ氏、成松氏の通っている界隈のアイドルについて言及し、その界隈を盛り上げようとして作られたものである。
ただ、『タナカ・成松のぼくたちの好きなアイドル・ガイドブック』というタイトルにしても売れるわけがないのであって、商業出版である以上はわかりやすいフックのあるパッケージが必要となる。そういった商業的な問題で「楽曲派」という言葉が選ばれたのだろうし、編集サイドの意向が反映されているのだろう。結果として、実際の内容と少しずれてしまった感はある。
「楽曲派」を自認しているオタク以外のオタクには「楽曲派」という存在に対してマイナスイメージを持っている人も少なくない。特にオタクに対する悪いイメージは強い。かってのアイドル現場における「サブカル」という言葉の使われ方と同じように使われているところがある。それによって受けなくてもいい強い風当たりを一部から受けることになってしまったのは本当に気の毒だと思う。
CDR音源が取り上げられていない
気になるところもいくつかある。
レビューの一部に活動休止を解散ととれるように書いていたり、BiSの音楽性についてパンクロックとしていたり疑問の残る物もある。しかし、全体としては妥当な記述のレビューが多いといえる。