常識的に考えられない
今回の騒動、まずはインスタで見た金井氏の写真を無断でイラスト化していたというのがわかった時点で驚いた。
江口氏が写真をもとにイラストを制作していることは本人も言っていたし、昔から知られていたが、さすがに最近は許可を得た写真や自分や関係者が撮った写真をもとにやっているだろうと思っていたからだ。インスタに流れてきた写真だったら本人に連絡とればいいだけの話なのに。
著作権や肖像権に対する認識が社会全体として乏しかった80年代90年代ならともかく、現在でもまだそのまんまのやり方でやっているというのは常識的に考えられないことであり、企業で使われたり、有名出版社から作品を出しているような人がまさか大御所がそんなことをしているとは思いもしないだろう。同じような人も多いと思う。
自分の展示会に出す作品ならまだしも、企業の広告や自治体にそういう作品を納めていたとは……。
そうしているうちに写真の無断使用が疑われる近年の作品が続々見つかっていくわけで。もう、なんとも。
その中には金井氏と同じく事後承諾されたものもあったのだが、何でその時にマズいのかなと思わなかったのか。
江口氏によるトレパクであると断言し糾弾している人がネット上には多いが、江口氏の行為がトレースなのか模写なのかは、ハッキリとしたことはまだわかっていない。トレース自体は技法のひとつであるし、それ自体が悪いわけではない。著作権や肖像権の話というのは難しいものであるし、作品としての独立性という問題もあって、トレースや模写したものが全て法に触れるわけでももちろんない。
ネットであげられているイラスト、それらすべてに本当に問題があるのかは現時点では結論が出ているわけではなく、個々の作品において検証していかなければいけない問題であって、江口氏の全てを悪と断じて叩けるような話ではない。彼が描線や色彩で後進のイラストレーターや漫画家に与えた影響という過去の実績まで否定できる話ではない。
さすがにどうかというような雑な暴言がネットで飛び交っている状況は、いつもの光景であるとはいえ、鼻白んでしまう。
拡散されたアカウントの中には、今まで見た炎上を煽るポストを参考にどうやったら人を煽れるか考えながら書いたと言い、その手法を説明している人までおり、さすがにどうかと思う。
それはそれとして、過去の実績があろうが、トレースだろうが模写だろうが、無断でそのままイラスト化した作品が実際にあることの問題がなくなったりするわけがないのも当たり前の話なのである。