印象的だった漫画の最終回
ここからは、記事で触れていない話を。
漫画でいえば『常人仮面』(原作・一路一、作画・鶴吉繪理)が最終回を迎えたことが自分にとっては大きな出来事だった。
生まれつき心臓の悪い男子高校生・コクトこと大高克人と双子の姉・ツミこと克己は療養のため祖父の暮らす北海道ひばり町に引っ越してくるが、ひばり町は地震をきっかけに「梁界」と呼ばれる異世界に転移してしまう。
そこは11もの平行世界が繋がった異界であり、そこでは人間が生き物を殺すと殺した相手の姿が反映された姿になってしまうという奇妙な法則に支配された世界だった。
平行世界の奇怪な静物。
徐々に本来の姿を無くし、人間の姿からかけ離れていく登場人物たち。
11の平行世界の一つ「孤高」で生み出された、身体能力が向上し予知や霊感まで感じとれるようになるゲンシ器官という万能兵器。
もとから姉を守るためには善悪を問わない行動をとる、一般的な倫理感を持たないコクトだが、2個装備することすら危険を伴うゲンシ器官を6個も体に持つことによって彼はどう変貌していくのか
どこかゆがんだ愛情で繋がっているコクトとツミの姉弟、共に転移してきたクラスメイト、「梁界」で出会うさまざまな「人間」たち、それぞれの運命は?
概略を説明するとそんな物語なのだが、タイトルやあらすじで想像されるようなバトル漫画でもなければ、異界の秘密を解き明かすような物語ではない。
コクトの行動は主人公としてあるまじきドン引きするようなものばかり。「梁界」の法則で変身していく「人間」の姿はグロテスクに描かれ、変身するたびに元の人間性から離れていく登場人物の様子も哀しいものがある。間違っても一般的な人気が獲得できるような作品ではない。
ただ、自分は登場人物のそれぞれ生きている姿と、最初からつんでいる状況の中で唐突に差し挟まれるどこかとぼけたユーモアが印象的で、どんな最低な「人間」でも愛おしくなってしまい、非常に好きな作品だった。
色々な謎も世界の危機的状況も何も解決しないまま物語は終わったのだが、これはコクトとツミの二人の物語だったのだからそれでいいし、そこがいいと思っている。
主要キャラはみんな好きなのだが、あとは無念坊と莉々の二人の旅が豊かなものであることを祈っている。
