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中核派として革命を目指す女子・洞口朋子インタビュー

中核派として革命を目指す女子・洞口朋子インタビュー インタビュー
インタビュー社会
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19歳から前進社で共同生活

洞口さんは同じく革命を志す中核派の人たちと、前進社で共同生活を送っています。前進社とは『前進』という新聞を刷って発行したり、YouTubeの広報アカウント「前進チャンネル」を運営したりしている事務所であり、中核派の人たちの住居にもなっている建物です。いま(編注:取材当時)は女性が2名、男性が10数名暮らしています。

2018年6月に「前進チャンネル」で、前進社の内部を紹介する動画が公開されて反響を呼びました。秘密めいた印象の内部があっけらかんと映し出されていることにも驚きましたが、何より内部を紹介している洞口さんに私は興味を惹かれました。可愛らしい若い女性が、壁にずらりと張り出された公安警察の顔写真を見て悪態をつく姿は、なんともミスマッチだったのです。これはどういうことなんだろう。私はさっきのように革命について話す女性を初めて見ました。同じように感じている同世代の人は多いようで、前進チャンネルの視聴者は10代と20代がメイン層だそうです。最近ではビラ配りをしていると声をかけられることもあるようで、その多くが高校生だと言います。

「良くも悪くも中核派を知らない人が見てるんですよね。なんか面白いって言われることが多くて。私は普通に喋ってるだけなんですけど……」

首を傾げる洞口さんの後について、公安警察のキャンピングカーに見張られながら前進社にお邪魔しました。頑丈そうな鉄製の扉は公安警察が家宅捜査で突入する際にこじ開けた傷の修復跡だらけです。しかし入口は鉄製扉ではなく、実はその隣にぽつんとありました。こっちの扉切ったほうが派手ですからね、と洞口さんが言います。インターホンを押すと、監視カメラから視線を感じて、ややあって中にいるお兄さんが二重の扉を開けてくれました。外部の人はもちろん、住んでいる人たちも自分で玄関を開けて入ることはできないようです。

中に入るとすぐ、扉を開けてくれたお兄さんが複数の監視カメラの映像を見張っていました。ここは24時間いつでも誰かが交代で見張っているそうです。こんな冷やかしみたいな感じでお邪魔していいものか申し訳ない気持ちでしたが、監視中のお兄さんも、中核の旗の前で煙草を吸っているおじさんたちも、暑い食堂で野菜や魚をさばいているおじさんたちも、みんなすごく笑顔でした。そう、みんなすごくいい笑顔だったんです。街中では滅多に見かけないくらい。

事務所のテーブルにはおびただしい数のデモや集会のチラシに、『前進』も積まれています。同じ志の人たちが一緒に暮らすって、すごく幸せなことなのかもしれません。急に親戚の家に帰省したみたいな気持ちになって、自分でも驚きました。洞口さんは19歳から10年間、ずっとここで暮らしています。

「あの、今日は洞口さんのことが気になって来たんです」

私がそう言うと、洞口さんは少し驚いたように笑いました。休みの日は何してるんですかと聞くと、洞口さんはもっとはっきり驚いて笑います。

「なーんですかね。趣味もないし、ぶらぶら1人で歩いたり、カラオケに行ったりとか。高校の同級生に会ったりします」

私は洞口さんについて、カラオケでは中森明菜から演歌まで歌うこと、特に安室ちゃんと椎名林檎が好きなこと、中核派にもそうじゃない人にも友達がいること、髪型やメイクについて中核派では特に規定されていないことを知りました。

「革マルって党派と戦ってた時は、いつやられるかわからないのでヒールとかスカートとかはダメでした。私は集会の時は警察とか右翼からの襲撃に備えて、ヒールとかスカートは履かないです。ほかの女性活動家はヒール履いてる人もいます。70年代からやってる人からすると、いまの中核派はゆるくなったって思われてるかもしれません」

前進社にはアルバイトをして暮らす人も正社員として勤めに出てる人もいて、中で結婚した人も、結婚相手がほかの場所に住んでいる人もいるそうです。ちょっと変わったシェアハウスみたいですが、洞口さんは社員寮みたいなイメージだと言います。

「公安のキャンピングカーが誰が何時に出かけたか記録してるので、新しいメンバーが入ると自転車で追いかけてきて顔とか覗いてくるんですよ。マジで気持ち悪いです」

社員寮にしては少し変わっているところもあるようですが、とにかく洞口さんはここに住んで活動に専念しています。

「カンパで生活しているので豊かな生活ではなくて、フリーターやってたほうが好きに生きられたかなって思う時もあるんですけど、こっちの生き方でよかったなって思ってます」

最近の前進社は秋の臨時国会に向けて改憲問題の話で持ちきりだそうです。

「みんながいるから力を合わせればなんとかなるかなって思ってるんです」

突然、地鳴りがしたので息を飲むと、「これ下の鉄扉が開いている音なんですよ」と洞口さんが教えてくれました。こういうのにも慣れちゃいましたね、と苦笑いしています。

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