日本維新の会が発表した、高齢者の医療費窓口負担を原則3割にする改革案が波紋を呼んでいる。「高齢者に医療を受けさせないつもりか」「世代間対立を煽るだけだ」など無茶苦茶な批判が展開されているが、老人の医療費の爆増が問題となっていることは間違いない。現役世代が高齢者に搾取され続ける現在の医療制度がこのまま維持されれば、高齢者はウンコまみれの放置死が当たり前の地獄社会と化すかもしれない。ノンフィクション作家西牟田靖氏が、この問題に詳しい勉三氏に話を聞いた。
極論で議論が封じられる老人医療問題
病気になったらまずは医者にかかる――これができるのは日本が国民皆保険という制度をとっているからだ。国民全員の医療費の負担が軽減され、誰でもが安心して医療サービスを受けられるのだ。
その国民皆保険制度が現在、危機に瀕している。というのも、年々、少子高齢化が進んでいるためだ。自己負担が少ない70歳以上の高齢者の人口が激増することで、それに比例して老人医療費が爆増している。
現役世代の働き手は、その皺寄せを一方的に受けている。老人たちを支えるために、過剰な割合の社会保険料を天引きされ、勝手に生活を苦しくされてしまっている。少子高齢化が進むことで、否が応でも、貧乏くじを払わされているのだ。
現在、SNS上では、老人医療費爆増による現役世代への負担を問題視すると、すぐに、「もし国民皆保険制度をなくしたら、アメリカみたいにバカ高い保険に入ってないと医療を受けられない自己責任がすべての社会になってしまう」という極論にすり替えられたり、「老人医療を削ったら、結果苦しくなるのは現役世代だ」という現状肯定論が飛んできたりするが、ポジショントークの域を出ないものが多い。
ウンコまみれ放置死という現役世代の未来
そんな中、エビデンスに基づいた現実的な意見を主張する論者もいる。
高齢者分野を中心とした社会保障費負担の酷い世代間格差を訴え、SNSやnoteで積極的な活動を展開しているのが、勉三さんというインフルエンサーである。
彼の主張は、「バラマキ老人医療を見直すというのは皆保険制度をなくすことでもないし、現役世代に皺寄せがくることでもない」という穏当なものだ。その一方で彼は、このまま制度設計を見直さなければ大変なことになると、警鐘を鳴らしている。