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PROFILE:
ロマン優光(ろまんゆうこう)
1972年生まれ。高知県出身。「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ロック・ユニット「プンクボイ」としても活動している。近著に『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』など。
X:@punkuboizz
「なんだこれ」感が生まれてしまう
意図的に「バカ」を描くことを目的とし(ギャグやコメディ、バカな人物を描く、メタ系など)、それが意図通りに実現しているもの、バカとしか言いようがない部分はあるが全体としてはそれ以外の要素が強い作品を除外し、構造上バカ要素を帯びざるを得ないエクスプロイテーション系・マーケティング系、意図してないのに何らかの要因でバカみたいになってしまった作品を本稿では取り上げていきたいと思う。
ハロウィンのカボチャを被った女子高生・尚子によるいじめ加害者への復讐から始まった『パンプキンナイト』(原作:外薗昌也 作画:谷口世磨)。外薗昌也自身が作画も務めた『鬼畜島』以降の商業性に振り切った作品の流れにあり、谷口世磨の画力・原作解釈との化学反応によって尚子が想定外の方向で人気となり、明後日の方角に向かってすすむことになった、LINEマンガで連載中の作品だ。
作家性が強い才能ある作家が作家性を捨てて描く残酷エクスプロイテーション作品が、読者が勝手に見出した奇妙かつ真摯なエモ味や聖性というものに引っ張られていくうちに、スプラッター作品にありがちな裏ギャグという想定内の「バカ」要素以外のものが加わることになり、何とも言い難いバカ漫画になってしまった作品だ。
『漫画ゴラクスペシャル』で連載されている『隣人X』(楠本哲)は「ヒロインが出会った爽やかな好青年の正体は凶悪なストーカーだった…」というサスペンス・ホラーなのだが、ストーカーのキャラに近親姦、旧家(変な執事付き)、怪力、人肉食etc.と載せられるだけ載っけていて、過積載にもほどがあるバカ漫画というしかない作品である。ラーメン二郎系というより日高屋のモツ野菜ラーメンに卓上のラー油とコショウを限界までぶち込んでみたようなジャンク感が魅力。
初連載作品がヒットした後の2作目というプレッシャーがかかる状況の上に、連載開始が大幅に早まることで準備期間が削られ世界観の練り込みが不十分になるなど負の要因が重なった結果、バカ漫画になってしまったのが『GUN BLAZE WEST』(和月伸宏)である。