アメリカ西部開拓時代(『るろうに剣心—明治剣客浪漫譚—』と同時代)を舞台に実在の人物を絡めながら、主人公であるビュー・バンズ少年(ガンマンなのに不殺)が仲間たちと伝説の地「GUN BLAZE WEST」を目指して旅をする、『武装錬金』のカズキと『るろ剣』の弥彦を足して2で割ったような主人公による『るろ剣』ミーツ『ONE PIECE』といった物語だ。
西部開拓時代のアメリカにサイボーグや異能の西洋甲冑の騎士があらわれるからバカ漫画なのではない。同じ和月の『エンバーミング—THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』(これも同時代が舞台)だって似たようなものだ。しかし『るろ剣』も『エンバーミング』もバカ漫画ではない。どんなトンデモ要素でも、読者が物語に引き込まれていれば受け入れられてしまうのだが、設定や登場人物の作りこみが不十分だと、そこにいたらず「なんだこれ」感が生まれてしまう。本作のバカ化の原因はそこだろう。
「コンセントレーション=ワン」という最大の奥技が、単に「すごく集中すること」でしかなく、見た目も地味なのに大仰に登場してくる「なんだこれ」感が半端ない。全体的にポカンとさせられることが多い作品だが、主人公チームのキャラは「るろ剣」北海道編で活かされているし、「コンセントレーション=ワン」だって北海道編の御陵衛士・阿部十郎の近接射撃の中に活かされている気がしないでもない。個人的に非常に愛着のある作品だ。
「ばえ」一点突破型の現代マーケティング系バカ漫画の始祖の一つである『GetBackers—奪還屋』を是非取り上げたかったが、大胆すぎるオマージュ系としての要素も強く、今回は取り上げるのを断念。しかし「風鳥院流絃術拾参絃 武の陣 第弐拾の参 『双葉芽吹』」ってすごい字面だ。
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文/ロマン優光
画像/『パンプキンナイト』1巻(原作:外薗昌也 作画:谷口世磨/竹書房)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年1月号