漫画好きの識者の方々に、思い入れのある泣ける漫画を挙げてもらった!
PROFILE:
劇画狼(げきがうるふ)
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロ作家の単行本未収録作品の書籍化や書評、イベント司会、原画展企画などを行う。
X:@gekigavvolf
シバの自爆よりもハーン兄弟
我々、健全なる昭和人間が「純粋に泣ける」マンガとは。それはもちろん…「敵もろとも自爆」シーンがある作品。好きなキャラクターが仲間の命や世界の平和を守るため、最高の顔で敵を巻き込んで大爆発して散ってゆく。『ゲッターロボ』にて、記憶を失った竜馬を置いて単身出撃し、ゲッターロボの腹部からエネルギータンクを引っ張り出して大量のメカザウルスを道連れに自爆した巴武蔵を筆頭に、ナッパの背中にしがみついて自爆した『ドラゴンボール』のチャオズや、「私が死ねば今まで以上に鬼殺隊の士気が上がる」と言いながら妻子もろとも屋敷を大爆発させ鬼舞辻無惨攻略の糸口を作った『鬼滅の刃』の産屋敷耀哉など、もうとにかく漫画という娯楽において自爆以外に泣けるシーンなど一切存在しないという最悪の偏見の元、今回は何度でも読み返せる自爆がある作品を紹介したい。
個人的にかっこいい自爆の筆頭は、『青 オールー』の熟女殺し屋・線子だ。見た目はどこにでもいるおばさんなのだが、いきなり登場したと思った次の瞬間には、スーパーでの買い物帰りにふらっと立ち寄ったヤクザ事務所をゴーヤを使って壊滅させる作中最強クラスの身体能力の持ち主で、登場シーンのほぼ全てで「髪はいい女の命よ。触れられるのは好きな人とカリスマ美容師だけ… プッ、カリスマって古いか!」などのセルフツッコミを駆使した圧倒的コミュ力を発揮し、市民プールでは水着が脱げてイヤ~ンとなったりドラマみたいな恋をしたがるなど、とにかく線子は全マンガの中で一番いい女であることを全うし読者全員を虜にする。
最期は時間稼ぎのために命を捨てることを求められ敵陣地に特攻。一瞬でヤクザ複数名を秒殺するも、ライバルの炒子に体の大部分を切断されてしまう。そしてこの絶体絶命の危機に線子は「(体を切られて)20㎏のダイエット成功。プッ 違うか」と最高の笑みでダイナマイトに点火して散っていったのだった。連載終了から20年経つが、その間もずっと線子は全マンガの中で一番いい女だ。
次は皆さんご存じ『北斗の拳』。この作品での自爆といえば、南斗白鷺拳・シュウの息子シバがサウザーの部下を巻き込んで自爆した場面が一番有名かもしれないが、個人的には単行本17巻、天帝編に登場した南斗双鷹拳のバズ(兄)とギル(弟)のハーン兄弟を推したい。
かつてファルコに敗れ投獄されていた2人は、復讐を果たすべく再戦するが一切歯が立たず兄・バズは瀕死に。もう助からないことを悟ったバズは不発弾の信管に額を叩き付けて自爆した。登場シーンこそ多くないがスピード感ある兄弟の絆を見られる名シーンなのでぜひ再読いただきたい。
『からくりサーカス』にて、鳴海を救うために自身の血液をほとんど輸血した上で、体に埋め込んだプラスチック爆弾で大量の自動人形と一緒に自爆したエドワルド・ダールのエピソードも素晴らしかったが、『女犯坊』にて、主人公・竜水と激しい性行為を繰り返した後に、いきなり生皮を剥がれ、空を飛ぶためのマントにされてしまったモリガンは可哀想すぎて純粋に泣ける。なぜあんなことに。

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文/劇画狼
画像/『北斗の拳』17(武論尊/集英社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2026年9月号
