逃走中の死亡事故は稀だが、自殺の人身事故は日常茶飯事だ。警察庁と厚生労働省の発表では20年4月に駅構内と鉄道線路内で自殺者した者は38人。毎日1人は自殺していることになる。
電車の人身事故に慣れてしまうのは仕方ないのかもしれないが、迷惑だと悪態つくのはどうかと思うが……。
一方、車内での自殺もある。冒頭の模倣犯は未遂であったが、15年6月に東海道新幹線内でガソリンを被って焼身自殺した71歳の男。
長時間、逃げ場のない新幹線での焼身自殺は他人を巻き込む目的があったのは間違いなく、亡くなった52歳女性は無念だったであろう。
日本の新幹線の安全神話が崩れた瞬間でもあった。
東海道新幹線車内の事件といえば、18年に22歳の男が鉈で1人を殺害し、2人に重傷を負わせた凶悪犯罪。犯人は「刑務所に入るために計画した無差別殺人だ」と宣い、「見事に殺しきりました」との発言を残している。
小説やドラマでも度々、殺人事件の現場となる長距離列車は、リアルでも度々、その舞台になり果てている。
一方、短距離を走る電車もリスクはある。1995年の「地下鉄サリン事件」。13人が死亡し、6000人以上が重軽傷を負った世紀の凶悪テロが行われたのは数分間隔で駅に止まる地下鉄だった。
人を殺すのに十分な時間密室を作り出す電車。それにも関わらず飛行機のように金属探知も行われない。今後も同様の事件を生み出す可能性は極めて高く、実際にあらゆる犯罪の温床となっている。
それでもあなたはまだ、電車に乗りますか?
初出/実話BUNKA超タブー2022年1月号