退路を塞いで爆撃する悪の所業
さて、残すはワースト3だが、どこかはお判りであろう。しかし3位と2位は勘違いしている人がいるかもしれない。ワースト3位は、長崎市である。
終戦の年の8月9日、午前11時2分。米軍の爆撃機により、長崎市へ原子爆弾「ファットマン」が投下された。人類史上2回目で、かつ実戦で投下された最後の核兵器である。
これにより、7万332人が犠牲となったのだが……遡ること、1時間18分。午前9時44分、この爆撃機が福岡県小倉市上空に到達していたことをご存知だろうか。そう、実は第一目標は小倉市だったのである。
あとは目視で投下目標を確認して落とすだけだったのだが、煙に遮られて失敗した。ルートを変えてチャレンジするも、失敗。この煙は八幡製鉄所の従業員が、広島に落とされた新型爆弾を警戒し、コールタールを燃やして作った煙幕だった。結局、3度の目視に失敗した爆撃機は小倉市を諦め、第2目標の長崎市へ向かったのである。
山で囲まれた長崎市よりも平坦な小倉市のほうが隣接する都市にも爆風は届き、被害はさらに大きくなっていたと予想され、ワースト2位、いや1位になっていた可能性もある。
さて、長崎の原爆よりも犠牲者が多かったのは、東京区部の空襲。そう「東京大空襲」だ。
東京に対する空襲は大小合わせて122回。そのうちの最大であり、いわゆる「東京大空襲」と呼ばれているのは3月9日深夜から10日にかけて、下町を狙った爆撃である。まずは周囲に焼夷弾を投下して退路を塞いでからの絨毯爆撃にて、全焼家屋約26万7000戸、死者約8万4000人に及んだ。すべての空襲により、東京区部の市街地の約50%を失ったという。犠牲者は累計で10万5400人。そこまでやる必要があったのか。
残すワースト1位は、人類史上初の都市に対する核攻撃を受けた、広島市。
最後の年の8月6日、午前8時15分、米軍爆撃機が投下した原子爆弾「リトルボーイ」にて、14万人が犠牲になったとされている。
以上、ワースト20位まで紹介したが、死者は全都道府県に及んでいて、民間人だけで40万人以上の犠牲者があったという。
戦争とは罪なき者が数多死ぬ。心に刻むべき真理。
文/ダテクニヒコ
初出/実話BUNKA超タブー2021年9月号