フェミニズムとは何か?
「フェミニズム」とは何か? デジタル大辞泉の解説によれば、
とあるが、女性を「解放」することと「尊重」することにはズレがありそうだし、「女性を尊重」することと、女性の権利を「男性と同等」にすることの間にも、矛盾が起こりそうである。一読して、わかるようなわからないような? という印象を抱く人も多いかもしれない。
事実、フェミニズムには様々な流派が存在し、「女性を男性と異なるものとして賛美するか、女性性や男性性といった社会でつくられた性差そのものを解体していくか」「ポルノやセックスワークを否定するか肯定するか」など、異なる主張による対立や論争が繰り返されてきた。
フェミニズムの大まかな傾向としては、女性個人の自由を希求する新自由主義的な価値観を根幹にする流派と、資本主義経済のもたらす格差を国家による再配分によって是正する社会民主主義的な価値観を根幹にする流派が多い。また、アカデミックな領域では左派的な思想・運動だと考えられることが多く、日本の大学では基本的に英米からの輸入学問という位置づけである。
出版されている書籍にもそうした傾向があるが、アメリカの禁酒運動を牽引した福音派フェミニズムや、日本で廃娼運動を行った日本キリスト教婦人矯風会など、宗教的な価値観や保守的な規範を重視する流派や運動も数多く存在しており、仁藤氏やコラボの活動は、どちらかといえば保守的な婦人保護活動に近い。
フェミニズムが起こった背景には、19世紀ヨーロッパのブルジョワ革命期に成立した近代家族の「家庭内(私的)領域と公的領域の分離」という性質がある。近代化によって、共同体における相互監視を通じた介入の力が弱まり、女性は選挙権だけでなく、財産権も親権も、離婚の自由も持たない無権利状態に陥ってしまったのだ。噛み砕いていうと、妻子を殴ったり、飲む・打つ・買うで大きな借金をつくったり、遊び歩いて帰ってこないようなろくでもない男は、前近代ではご近所や共同体から制裁を受けたが、近代化により外から干渉を受けない独立した家庭ができた結果、男性に対し弱い立場になりやすい女子供の平穏が保障されにくくなったのだ。比較的裕福で教養もある女性を中心に、そうした状況から脱却を図ろうとしたことが、「フェミニズム」のはじまりである。