こうした指摘の大部分はおそらく正しい。しかし、これは怪獣映画である。そういった指摘がいかに正しくても、どうでもいいことといえば、どうでもいいことだ。何か変なとこがあるのは人間ドラマだけではないはずである。 例えば背びれゲージはトンチキだと個人的に思うが、気にするようなことではない。 ハードでシリアスとされる傑作『ゴジラVSヘドラ』においても、ゴジラの飛行シーンというトンチキがあるのがゴジラ映画だ。 神木隆之介演じる敷島浩一がゴジラに挑まなければならなくなるまでがわかりやすく描かれていたので、それでいいのだと思う。メインの話の流れがわかりやすく、ゴジラがかっこよければそれでいいのがゴジラ映画で、たとえ意識が低かろうが自分はそれでいいと思う。
山崎貴監督が、ゴジラが最も恐ろしくカッコよく描ける時代としてあの時代を選び、終戦直後という時代設定やゴジラという存在を考えた場合に最低限クリアしなければならないセンシティブなポイントを最低限押さえようとした脚本だと個人的には思った。
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あと各所に怒られないように配慮された脚本だなとも思う。反戦や政府不信の空気は漂せつつも、明確な怒りの表現に乏しい。怒りを描くと、その怒りのあり方で政治的な党派性に回収されやすいが、怒りを明確にしない漠然とした政府への不信の表明はいろんな人に受け入れられる余地がある。そういう感じで如才ないとは思う。
まあ、確かに色々と深みはないかもしれないが、『永遠の0』の監督だったことを持ち出してきて、そういう映画も撮っていることから反戦のテーマも薄っぺらく感じるみたいな話をする人は、さすがにいきすぎだと思う。