岸田首相襲撃事件後に生まれた統一教会報道への批判
4月15日、和歌山市にて、岸田首相の選挙演説中に爆発物が投げ込まれる事件が発生しました。容疑者は24歳の木村隆二という男性。事件後に、安倍元首相を銃撃した山上徹也からの影響を指摘する声がネットで散見され、批判の声は、安倍元首相の銃撃後に統一教会問題を取り上げてきたメディアやジャーナリストたちにも向けられました。
批判の内容は大まかに言って2つ。
・山上徹也を英雄視する報道があったせいで岸田首相の演説中の事件が起きた
・山上徹也の言い分を取り上げる報道があったせいで岸田首相の演説中の事件が起きた
安倍元首相銃撃後の報道が、山上徹也を英雄視して、犯罪者である彼の言い分を取り上げてきたせいで、今回の事件が起きたと主張する人々が、匿名のツイッターアカウントだけでなく、それなりに名前のある識者の中にもチラホラいました。
代表的なところでは、フジテレビ系の『めざまし8』にて、「一部で(山上)容疑者をヒーロー視するような報道があって、今回の場合は動機はまだ分からないですけど、こういう第2の事件に繋がってしまったんじゃないかなっていう懸念があると思ってて」と発言した社会学者(!)の古市憲寿さんでしょう。古市さんをはじめとした「山上を英雄視」勢は一体どこのマルチバースからやってきたんでしょうか。
山上を英雄視したのって誰ですか?
「山上を英雄視する報道」
まずは、このバカの一つ覚えの主張に関してです。「山上が巨悪の安倍晋三の悪事を暴いたヒーローだ」なんて、山上を英雄視した報道なんて、見たことある人います?
ある著名人は「山上を英雄視したメディアなんか見たことない」という意見に対して、「ネットメディアまで含めれば、実例はある」とツイートしていましたが、ネットメディアって……。安倍元首相銃撃後の山上徹也に関する報道、統一教会に関する報道、というところで指す「報道」って普通考えれば、どう考えても、大手新聞、地方新聞、地上波テレビ、せいぜい大手週刊誌ですよね。
ネットメディアって、なんとかニュースみたいな「ニュース」の名を冠したどこの馬の骨とも知れない輩が作っているまとめサイトみたいなものも「報道」として含めるのであれば、もしかしたら山上を英雄視している「報道」もあったのかもしれませんが、そんな便所の落書きみたいなサイトのことを言われてもねえ。
あと「リベラル左翼が政権攻撃のために山上を持て囃した」みたいに、山上を英雄視した主語を「リベラル左翼」みたいな大雑把なくくりにする人もよく見ます。リベラル左翼って誰ですかね?
4月14日に作家の島田雅彦さんがネット動画で「暗殺が成功して良かった」と発言しました。また、昨年、漫画家の石坂啓さんが映画のトークイベントで、安倍元首相の事件を知った時、「思わずでかした! と叫びました」、「夫は山上様と呼んでいる」と発言したということが話題になりました。
これらの発言を指して、「島田雅彦は安倍元首相殺害を肯定している」とか「石坂啓は山上を英雄視している」と批判するならわかるんですが、この手の批判をする人たち、なぜか「リベラル左翼が英雄視している」と主語を大きくしちゃうんですよね。リベラル左翼を嫌いなのはわかりますが、落ち着け、と。
主語には「リベラル左翼」と入れてないものの、「山上を英雄視する人々がいた」「テロを礼賛する人々がいた」みたいに書いている人も、同じようなもんでしょう。主語をあえて書かないことにより、リベラル左翼的な人々が山上を英雄視したと言わんばかりです。
すごいたくさんのリベラル左翼な人々がテロを礼賛していたように書いてますが、著名人で言うと、島田雅彦さんと、石坂啓さんとあと誰ですかね。ネットを見ると宮台真司さんも批判されているみたいですが、それをもってリベラル左翼的な人々の大部分がテロを礼賛していたと言われてもねえ。もちろん、有象無象の匿名アカウントにはそういう人々もいたでしょうけど、それをリベラル左翼のマジョリティーとするのも無理がありすぎる話です。