19年に起こした裁判では、岡山家裁と広島高裁岡山支部は変更を認めなかった。最高裁も4年前は性別適合手術を合憲としている。ところがこの間、欧米の潮流は変わってしまった。自分の性別は自分で決めるという性自認至上主義一色に染まってしまったのである。
WHOは生殖腺撤去手術の強制はやるべきでないとの見解を発表しており、それに倣う形で日本学術会議も、性同一性障害特例法を廃止し、手術をしなくても自己申告だけで戸籍の性別を変えられる「性別記載変更法」を新たに施行するよう政府に提言書を出している。
こうした流れの中で行われた裁判だったわけだが、性別変更にはもう一つ条件がある。移行する性別の外性器に似た形状を形成しなければならず、こちらについては議論が十分ではないとのことで高裁に差し戻された。ただし、この外観要件も近いうちに違憲とされるというのが法曹関係者の見立てである。これからは、ペニスが付いていても女性、ヴァギナが付いていても男性として対応しなければならなくなる可能性が高い。
産経新聞などは随分前から警鐘を鳴らしていたが、一般女性からの反応はほとんどなかった。女性スペースを守ろうとデモを呼びかけても約20人しか集まらず、署名も約2万筆にとどまった。いま何が起きているか想像すらできなかったのだと思うが、反対の声の少なさが裁判に影響を与えたことは否めない。
キャスターの辛坊治郎氏は、ニッポン放送の『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』で、日本の銭湯文化は世界標準に従って次第になくなっていくだろうとの所見を述べた。よく、公衆浴場に限っては身体的区別にすれば良いと言う人がいるが、欧米ではこのような意見はトランスジェンダーに対するヘイトと見做される。正式に女性となった人を女湯というシチュエーションにおいてだけ排除することは、「アンタは本当は女じゃないよ」と告げていることと同じだからである。