畠山 日本では、選挙に出ることが特殊なことだと思われていますね。社会全体で立候補した人を支える仕組みが、まだまだない。休職をして選挙が終わったら戻るとか、任期4年間を終えたらまた復職するっていうような受け皿が、社会の側でできていないんです。
鈴木 落選したらただの無職の人、となると、優秀な人が政治家を目指さなくなりますよね。
畠山 今の選挙戦は、現職や世襲で選挙のノウハウをしっかり分かっている人しか勝てないような、すごく閉じた世界での戦いになってしまっている。だから、新規参入した人が志高く、俺が日本を変えてやるんだって言って供託金を積んで立候補したものの、公職選挙法でできないことだらけで驚いているうちに選挙期間の2週間が過ぎて、結局落選してしまう。それで周りから選挙に出て負けて恥ずかしいなんて言われて、心折れちゃって次は出てくれないという人が多いです。
鈴木 今の政治の状況って、すごく偏った人たちによる選挙でできてますよね。
畠山 政党が口では「投票率を上げましょう」って言うけど、具体的な働きかけも全然していないし。
鈴木 そうですよね。森喜朗さんは、寝ててくれればいいって本音をうっかり言ってしまいましたけど。
畠山 結局、既存候補者の間で票の食い合いをしているだけでは、なかなか状況は変わらない。投票率が少し上がるだけで大きな変化が起きます。
投票率アップによる変化を証明した杉並区長選
畠山 投票率が数ポイント上がるだけで状況がガラっと変わることの好例が、2022年の杉並区長選挙です。選挙の2カ月前にベルギーから杉並区に引越してきた、新人の岸本聡子さんという女性が、現職と187票の僅差で当選したんです。
鈴木 彼女の選挙戦に密着取材したドキュメンタリー映画ができましたね。