John Loder(とSouthern Studios)といえばCrassとの親密な関係や多くのアナルコ・パンクのバンドのレコーディング、レーベルをつくりUK Decayなどをリリース、DiscordやTouch and Goのようなアメリカのレーベルのヨーロッパにおけるディストリビューションを担当したり、パンク/ハードコアシーンとの関わりが深い人である。
ジーザス・アンド・メリーチェインの1stアルバム『サイコキャンディ』と『SONGS ABOUT FUCKING』が共にJohn Loderの手によってレコーディングされたことは少しだけ大切な話。
日本の鬼畜・悪趣味系サブカルへの影響
アルビニからの影響といえば、音楽だけではなく彼の書いたテキスト(の翻訳)やインタビューからも影響を受けた。88年に再刊された阿木譲の『ロックマガジン』に載っていたアルビニのテキストは局地的に強い影響を与えた。90年代の山塚eyeがエロ本や音楽誌に書いていた文章からはアルビニのテキストの強い影響が伺える。
アルビニのテキストはウィリアム・バロウズ的にも感じられたし、「Bad Taste」感の強いものでもあった。村崎百郎的にも感じる。文章のグルーヴ感の中には翻訳によって偶然生まれた部分もあっただろう。
いわゆる「ジャンク」のバンドは「Bad Taste」の文脈で露悪的で悪趣味な言語表現・ビジュアル表現をするものも多く、日本の鬼畜・悪趣味系サブカルとリンクする部分もあった。そもそも、日本のそれにはアメリカの「Bad Taste」的なものの翻案的なものや、影響がある。
中原昌也氏の小説『あのつとむが死んだ』などに登場する「飯島つとむ」のモデルである飯島つとむ氏の93年ぐらいのラジオネームは「スティーブ・メルビニ」。アルビニとメルヴィンズを融合させたもの。
93、4年くらいのこと、飯島つとむ氏(記憶では当時中学生か卒業したてくらいだが明確ではない)は『Bad Sun Rising』シリーズに収録されていた東京のバンド・Volume Dealersの新ボーカルオーディションに応募し、スタジオに来たものの緊張してしまい、見学だけして帰ったという。実際のところ、あの凄いバンドのボーカルにそんな年齢で挑戦しようとしただけでも本当に偉いと思う。