イメージが先行している有名作といえば『スケバン刑事』(和田慎二)。
ドラマの影響からセーラー服で戦う主人公や特撮的な珍妙さのイメージが強いと思うが原作は違う。原作の麻宮サキは女子高校生ではあるが学校にいる時に緊急事態が起こった場合でなければ、動きやすい戦闘用の服で戦うし、学生特命刑事という設定は荒唐無稽だし、不老長命の闇のフィクサーのような伝奇要素はあるが、基本的にシリアスでハードなアクション・スペクタクル巨篇であり、いわゆる萌え要素もない。
70年代後半〜80年代前半の少女漫画が産んだ骨太なアクション漫画のとんでもない傑作だ。
読者層が想像できない作品
1986年に講談社で連載開始、ドラマ化やアニメ化(劇場版も製作)、連載終了後も20年あまりの間に続編が何本も連載、2017年には作者の最新作に主要キャラがゲスト出演、こんな人気作のはずなのに好きだという人に自分は会ったことがない作品が存在する。
それが『ツヨシしっかりしなさい』(永松潔)だ。
好きでなくても、サラリーマン漫画・子育て漫画のように読者層が想像できる作品はあるものだ。
しかし、「スポーツ・アウトドア万能男子高校生が母や2人の姉に全ての家事を押し付けられ、DVやハラスメントを受け続けるほのぼのテイストの家庭コメディ」の読者層は未だに想像がつかないし、好きな人に会ったことがない。
あと、ツヨシの親友のメガネ男・渡辺。頭が悪く、年中発情していて、簡単にツヨシを裏切るし本当にひどい。17年に『テツぼん』(原作:高橋遠州・作画:永松潔)21巻に登場した際、50歳の彼は20代の女性にキモく絡んでいて健在ぶりを見せつけた。この時の「ヒショヒショばなし」という台詞の説明をしたいが字数が足りないので各人確認してほしい。本当に確認する人がいるかわからないが。
『ツヨシしっかりしなさい』のような作品が自称・漫画好き、漫画通の世界とは関係なく人気があること。この断絶感こそ漫画の奥深さ、とんでもなさなのである。
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文/ロマン優光
画像/『スケバン刑事』1巻(和田慎二 /KADOKAWA)
初出/『実話BUNKA超タブー』2024年7月号