聖千秋『サークルゲーム』は非常に濃厚な恋愛ドラマだ。ヒロイン、ライバル、ヒロインの幼なじみの男、転校してきた白人少年による小学生時代からの四つ巴の恋の物語。
ヒロインとライバルの腹黒キラキラ女は楊貴妃が死んだとき2つに分かれた魂のそれぞれ生まれ変わりで互いに同じものを奪い合う運命にあり、恋愛も演劇の主役の座もキラキラ女が横入りしてきてかっさらっていく。
キラキラ女もあれだが、ヒロインは直情径行すぎてどうかと思うし、幼なじみはヒロインとキラキラ女の間でフラフラして自分勝手で見苦しいし、この3人に対して「気持ちはわかるんだけど、お前らさぁ……」とイライラさせられっぱなし。白人少年だけが作中唯一安心できる存在だ。
ラスト、ヒロインと白人少年が無事結ばれ、キラキラ女は大スターになる。幼なじみくんは1人放置され、最後になんか彼がポエミィな回想をして終わるのだが、「お前ほんとなんなんだよ!」と、あいつにイライラする。
イライラしながら4人の恋模様を見守ってハラハラするのが非常にクセになる作品だ。
小花美穂『こどものおもちゃ』は子役スター倉田紗南とクールな不良・羽山秋人の幼い恋愛模様を小学生時代から描いた作品。ギャグ要素も強いのだが、少年少女の恋愛心理にキュンキュンし、彼らを襲う過酷な運命の数々(特に羽山)に胸が締め付けられそうになる、切なさいっぱいの作品だ。
ヒロイン紗南ちゃんにフラれた加村くんが羽山に言うちょっとした「意地悪」が切なく、加村くん、ほんといい奴だなと思う。加村くんといい、羽山にフラれた風花といい「負けヒロイン」たちも魅力的。
まあ、私的には、どこまでいっても羽山にキュンキュンしっぱなしなのだが。
梶本レイカ『コオリオニ』は単なるノアールとして読んでも傑作なのだが、恋愛漫画(BL漫画は基本的に恋愛漫画だ)の方法論でノアールを再構築した作品だと私は解釈している。極悪な犯罪者しかほぼ出てこないのに、奇妙に共感させられ、たびたび強い切なさに襲われる。なにより、番外編として描かれた後日譚の主人公2人の姿は恋愛漫画のラストシーンそのものであった。
私にとっては、自分を偽って生きてきた「ヒロイン」が小悪魔的な相手役に翻弄されたり、反発したりしながら、本当の自分の姿を見出し、真実の恋に目覚めるまでの物語だ。
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文/ロマン優光
画像/『サークルゲーム』1巻(聖千秋/集英社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年3月号