原稿の依頼は急逝した野田幸男監督の代わりとして書いてほしいというものだった。『アンヌへの手紙』の制作がスタートしていた1997年の夏に野田幸男監督は亡くなられた。原稿依頼は済んでいたのではなかったか。記憶がないがその原稿が結局書かれなかった。ページはとってあった。そんな記憶がある。
野田幸男監督のことは大好きだし、ひし美ゆり子さんのことはおそらくリアルな初恋である。テレビの画面の中のアンヌ隊員。女性という存在をはっきりと肉感的にも叙情的にも生まれて初めて恋した人である。胸がざわざわして全身が熱くなって涙がこみあげてくるほどに好きだった。暮れていく夕日を見ながら思うのは地球を去っていったセブンに対してでなくアンヌに対してだった。
でも最初は断ったと思います。分不相応だと思って当然です。でも最終的に書きましたから会ったことのない野田幸男監督のなにか気持ちを継ぐ思いとひし美ゆり子さんに対する強烈な思慕が強く働いたとのだと思います。
野田幸男監督とひし美ゆり子さんの接点として当時、私が見ていたのは『不良番長一網打尽』でした。
その映画で梅宮辰夫兄ぃ率いるカポネ団のメンバーとして出演していたのが岡崎徹さんである。クライマックス前に絶命し、その哀しさ悔しさがカポネ団を一丸とする。雨に濡れながら泣きながら、踊っていたのがひし美ゆり子さんだった。
どうしよう、赤い手錠とはあまり関係はないけど。書こうかな。ひし美ゆり子さんはお元気かな。そんなことを思いながら書こうかどうしようか思っていたらたまたま開いたXにひし美ゆり子さんの結婚報告が出た。
それで書いている。
不思議なことだと私は思っている。
おめでとうございます。
ひし美ゆり子さんとはこの本『アンヌへの手紙』発刊のイベントとかで初めてお会いしたのではないだろうか。その後、『トゥナイト2』の撮影でなんどかお会いした。ほかにもなにかお会いしている気がする。ただ、ひし美ゆり子さんと私を会わせてくれたのは野田幸男監督である。野田幸男監督のぶんも私はここに記します。
ひし美ゆり子さん、岡崎徹さん、ご結婚おめでとうございます。以下次号。