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神田裕子著『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』を読んでみた:ロマン優光連載338

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また、神田氏は配偶者や自分も発達障害傾向が見られ、娘もギフテッドであるということをネット上で語っているのだが、この中の誰も医師の診断を受けていない。発達障害の人に見られる傾向というのは定型の人にも見られることがあるもので、それがあるからといって発達障害であると医師でないものが診断できるものではなく、自己診断で発達障害であると思っていた人が実際に診断を受けると違っていたということも普通にあるのである。そんなてきとうなことを発達障害専門のカウンセラーを名乗る人が語っているのには驚いてしまう。

今後、神田氏が診断を受けた結果、発達障害であったとしても問題が解決するわけでなく、発達障害というものにそういうアプローチをしていることが問題なのは変わらない。

自分のことを優秀であると思い込んでいる社員の総称として「俺様社員」という言葉が使われており、SMAPの『世界で一つだけの花』(2003年)が大ヒットし、2002年にゆとり教育の開始したことが俺様社員の登場した背景にあるとあった。それ以前にもそれ以降にもそういう人はいるだろうし、微妙に違和感があったので調べたところ、2008年にダイヤモンド社から出た『俺様社員をどうマネジメントするか 自分はできると思い込んでいる若手を育てる3つの方法』(内田和俊)のネットで読める冒頭部分に『世界で一つだけの花』やゆとり教育のくだりのより詳しい説明があった。そこで取り上げられているのは『世界で一つだけの花』がヒットしたときに大学生で2008年に若手社員である世代(内田氏の本でゆとり教育と言っているのは少し変だ)に俺様社員が多く見られるという話だ。

自分のことを優秀であると思い込んでいる社員の話だったら、『世界で一つだけの花』のあたりはいらないし、それが当てはまる世代は40前後なのに、部下や同僚である想定のみで上司である想定がなかったり、まるで若手社員の話みたいに書いているのも変だし、なんだかよくわからない。まあ、困った人の人数合わせで引っ張り出された感が「俺様社員」にはある。

ブログを見ても、ネットリテラシーが不安だし、カウンセラーというよりセミナーの人が言いそうなことや、軽いスピリチュアルなことが書いていたり、ここでも少し不安になる。反ワクチンと反精神医学で有名な内海聡氏と交流があるのも、発達障害の専門を名乗っている人としてどうなのか。

そういう神田氏のゆるさが本全体に漂っている。

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著者が伝えたかったこと……

困った人をイラストで動物にしたのは出版社指示だったことが、イラストを担当した芦野公平氏の声明で説明されているが、親しみやすさ・愛くるしさを出そうとしているのだろうけど、タイプ分けの名称と同じで不快に思う人は絶対にでるわけで、これも障害・疾患名と結び付けたらダメだろうと思う。一般的に考えて、おそらくあれらの見出しも編集サイドによるものだろう。

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