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『近畿地方のある場所について』などホラー小説6選

連載
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モキュメンタリーホラー小説のプロトタイプ

電子書籍の利点がいかされたモキュメンタリホラーといえば、2014年にkindle上に発表された自主出版小説集である『忌録:document X。正体不明の作家・阿澄思惟氏の作品集だが、ページを進めると突然でてくる画像のいやさも特筆すべきではあるが、最後に収録された「綾のーと。」に登場するblogYouTubeアカウントがわざわざ実際につくられているあたりの偏執的な作りこみがすごい。

現行のモキュメンタリホラー小説のプロトタイプといえるような作品集であり、なかでも「忌避(仮)」はPC上のファイル内にある、とある幽霊屋敷に関する資料やメールのやり取り、断片的な原稿がランダムに配置された非常に混沌とした構成と変なリアリティと理解しがたい記述が交錯するメタフィクション要素のある奇怪な作品であり、いつ読んでも落ち着かない気分になるので非常に好きな作品である。未だに作中で何が起こったのかをはっきり理解できてない。

そういえば、『近畿地方のある場所について』にもあった、真っ黒な画像を明度をあげたりして調整してみたら人の顔が映っているという怪異はどの作品が最初なのだろう。

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真島文吉氏の『右園死児報告』は、右園死児という名の人物あるいは動物、無機物によっておこされた異常な現象に関する報告書、それに関する会話の記録によって構成されたモキュメンタリー的手法が取り入れられた作品である。とはいえ、そこで描かれている世界は我々が現実に暮らしている歴史線上にある世界ではなくパラレルワールド的なものである。

前半と後半では作品のテイストがガラッと変わってしまう、非常に野心的・実験的な作品だ。純粋なホラー作品かといわれると違うと思うし、それが成功しているかについては人によって意見が分かれると思うが、個人的には好きな作品だ。そこはかとなく漂うコズミック・ホラー的なムードが好き。

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