『食キング(ショッキング)』は、B級グルメ店再生請負人にして凄腕の料理人・北方歳三が、経営に行き詰まり貧困に苦しむ飲食店を、奇想天外な修行法と新メニューで再起させる、90年代の人気テレビ番組『愛の貧乏脱出大作戦』に着想を得た変わり種グルメ漫画。北方自身は貧乏ではなく、潰れかけた店に法外なコンサル料を請求するが、実はそれが店舗再生の必要経費であり、純粋に人助けのためというハートフルな一面も。…なのだが、連載後期は店の再生よりも料理勝負が中心となり、物語は迷走。北方の先祖を描いたスピンオフ『洋食伝』シリーズも発表されるなど、読者置いてけぼりの展開はまさに“ショッキング”。ちなみに、北方歳三が放つ決め台詞「この店はすでに潰れている!」は、作者・土山しげる先生いわく『北斗の拳』から拝借したとのこと。
『快盗くいしん坊』は、85歳という高齢ながら現役で活動中のビッグ錠先生による最新作。ビッグ先生といえば、いわゆる料理人漫画(グルメ漫画ではない点に留意)で数々のヒット作を送り出してきたが、本作の主人公は、泥棒で前科者の中年オヤジ・コング。泥棒なのに料理が得意で、盗みに入った家庭が抱えるトラブルを、思いつきの料理で解決してしまうという、イイ人なのか悪人なのかよくわからない設定が実にビッグ錠ワールド。作中に登場するのは「カップ麺お好み焼き」「お粥」「コンビニ弁当」など、美食とはほど遠いメニューばかり。しまいには終戦直後の闇市へ唐突にタイムスリップし、たんぽぽコーヒーやさつま芋ケーキを浮浪児と傷痍軍人に振る舞うという、ビッグ先生自身の戦後体験に基づいた本格的な“焼け跡貧困メシ”にシフト。掲載誌である料理アンソロジーコミック『俺流!絶品グルメ』(ぶんか社)が休刊したため現在は連載中断中だが、奇跡的に単行本が発売されているので、ビッグ錠ファンは今すぐ買え!
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文/植地毅
画像/『華中華』(1)(原作・西ゆうじ 作画・ひきの真二 小学館)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年9月号