谷本 それについては、実は階級ごとにかなり異なるんです。アメリカ・イギリス・フランス・イタリアなどの豊かじゃない層だと、未だに旦那は外で働き、女は家にいて子どもを産んで飯をつくってろって感じがよしとされている風潮。女には勉強すらさせず、「代わりに子どもをちゃんとつくるんだぞ」みたいな家庭も全然あります。男女平等が進んでいるのは、あくまで中流以上。女性も働くけど、前提は男性と同じ環境・条件で働くこと。女性の仕事量やノルマは男性と変わらないし、「あなたは育児休暇を取ってパフォーマンスが下がったからクビ」なんていうケースもザラです。ただ、厳しさと同時に、評価も平等なので、管理職に女性がたくさんいるのも事実。100人の社員の管理を泣き言ひとつ言わずにこなす女性管理職の知り合いもいますね。
松浦 なるほど。その厳しさだから、軍隊にも当たり前に女性が……。
谷本 一度、イギリスで救急車を呼んだんですが、乗っていた救急隊は若い女性と中年女性だけ。男性を軽々持ち上げるほど屈強な身体をしていましたが、麻薬中毒や酔っぱらいに殴られることもあるって。それでも「平気ですよ」って笑ってましたね。警察がテロの制圧に行くときに女性が先陣を切ることだってあります。
松浦 女性だからキツい仕事は免除なんて、甘いことにはならないんですね。たとえば日本だと、建設業界に入る女性が増えてるけど、結局力仕事などのキツい業務は男性に回されて、少し身体が休められる事務仕事は女性にとられてしまうから、男性ばかりがしんどくなっただけ、みたいな話もある。
谷本 日本は本当に女性に優しいですよ。知り合いの消防士も、危ない仕事は女性にはやらせないって。私も日本で働いてたとき、態度のキツいお客さんの担当になると、ほかの男性社員が「代わるよ」って言ってくれたり……。
松浦 日本のフェミニズムがガラパゴス化していると感じたのは、日本のフェミニズム第一人者とされる上野千鶴子さんが、男女平等を訴えているのに、女性が自衛隊に入ることには反対していたこと。「私たちのフェミニズムは弱者が生き延びるための思想であって、強いほうに加担して、人殺しする域に女性は入っていくべきではない」という趣旨の話をされていたんです。なぜ男女平等なのにそこだけ違うのか、違和感が大きかったですね。
谷本 やっぱり日本のフェミニストたちは甘えていると思います。男性のように自分でしっかり稼ごうという意識が薄い反面、自分たちの権利は主張する。差別されているというのなら、まずは男性と同じ社会で生き抜く覚悟を決めてからだと思いますね。
構成/田中さと
初出:実話BUNKAタブー2025年11月号
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