同番組は高視聴率を集める人気番組だったが、1997年に突然打ち切りとなっている。番組をプロ野球の優勝決定戦中継に差し替えられたことでプライドを傷つけられた松本が「事前の連絡がなかった」と激怒。吉本興業の慰留も振り切って自ら番組を降板するという暴挙に出たのだ。 今回の大悟の降板騒動も同じフジテレビの番組で、局側が原因を作りMCが局側の判断に怒って、番組を降りたということで多くの類似点がある。
しかしこの二つの降板劇には芸人としての格、売れ方、そして吉本興業との関係において決定的な違いがある。結論から言えば、松本の行動が「覚悟」の表明であったのに対し、大悟の行動は吉本の庇護を笠に着た「小物芸人」のムーブに過ぎないのだ。
まず、当時の松本人志と現在の大悟では、お笑い界における「格」が違いすぎる。松本はお笑いの世界を独力で切り開き、誰も追随できない圧倒的なセンスと実力でテレビの頂点に立った。その地位は、吉本興業という巨大組織の力に頼るものではなく、自身の才能で築き上げたものだ。だからこそ松本はテレビ局と対立し、吉本の制止を振り切って番組降板という暴挙を押し通すことができたのだ。
実際、松本の暴走は、吉本興業が多大な労力を割いてフォローし、フジテレビも渋々ながら怒りの矛を収めている。この一件は良くも悪くも実力とカリスマに裏打ちされた芸人の「覚悟」を示した事件として語り継がれている。
一方の大悟はどうか。確かに冠番組を多数持ち、売れっ子芸人の1人であることは間違いない。しかし、大悟が今のポジションを築けたのは、何より吉本興業という巨大な権力の傘の下で多くの番組に押し込まれ知名度を上げてきた側面が強い。吉本という後ろ盾なしに今の地位はあり得ず、その意味では松本のような「替えの利かない絶対的な存在」ではなく、吉本の力さえあればいつでも替えの利く「フォロワー芸人」の1人に過ぎない。
「実際、大悟は騒動の舞台となった『酒のツマミ』の現場でもかなり苦労していましたからね。もともと番組は松本さんに心酔しているスタッフばかりですが、後任MCになった大悟はしょっちゅうダメ出しされていました。松本は笑いをはさみながらゲストのトークをうまく引き出していましたが、大悟はすぐ酒や下ネタなど下品な笑いに逃げることが多く、視聴率も芳しくなかった」(前出・テレビ局関係者)
