15年成立の安全保障関連法では、日本に対する直接攻撃がなくとも、密接な関係の他国が攻撃を受け、日本の存立が危ぶまれる「存立危機事態」であれば、自衛隊が集団的自衛権を行使できるとされた。 「ただ、歴代政権は、台湾有事と存立危機事態の関係について、明確な答弁を避けてきました。台湾有事に自衛隊が参加する可能性を示せば、中国を不用意に刺激する可能性が高いからです」(前出・政治部記者)
しかし、高市総理は、就任以前から「台湾有事は日本有事」と対中強硬姿勢を重ねて示してきた経緯がある。岡田氏の質問は、総理としての見解を改めて問い直すものだったともいえよう。これに対して、高市総理は次のように答えた。
「台湾を完全に支配下に置くためにどういう手段を使うか。単なるシーレーンの封鎖かもしれないし、武力行使かもしれないし、偽情報、サイバープロパガンダかもしれない。それが戦艦を使い武力の行使もともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースだ」
高市総理は、「存立危機事態だと認定して日本が武力行使を行うということではない」とも留保をつけたが、台湾有事が日本にとっての「存立危機事態」となる可能性を示唆したこの答弁は、従来の政府見解を踏み越えたものだという指摘が浮上した。
中国側の反発は激しかった。高市総理の発言撤回を要求するとともに、日本産水産品の禁輸や、訪日自粛の呼びかけをはじめとする、対抗措置に打って出た。日本行きの航空便が大量にキャンセルされたとの報道が出るなど、日中対立の長期化を懸念する声が高まっている。
過去にも言い過ぎたトラブルが
当の高市総理はここまでのハレーションを予期してなかったようだ。 「高市氏は周囲に『つい言い過ぎた』と漏らしています。11月10日の衆院予算委員会で『政府の従来の見解に沿ったものなので、特に撤回、取り消しをするつもりはない』と強弁しつつも、『特定のケースを想定したことについて、この場で明言することは慎もうと思っている』と反省を述べました」(前出・政治部記者)
