332回 楠桂と『ファンロード』と自分
急に自分のXのＴＬで漫画家・楠桂の名前を見ることが多くなり不思議に思っていたところ、色々ポストが流れてきて理由がわかり「楠先生も大変だったんだなぁ」と思ったわけだが、そういう話はさておき80年代の楠先生と『ファンロード』のことを少し思いだしたりしたので、それについて書いていこうかと思う。
80年代中盤から後半の楠先生というか大橋姉妹は雑誌『ファンロード』のスターであった。大橋姉妹（シスターズ）というのは楠先生（本名・大橋真弓）と先生の双子の姉である漫画家・大橋薫先生の二人を指す。
『ファンロード』というのは80年に創刊されたアニメ・漫画・特撮・必殺シリーズ・SFといったものを中心に扱うオタク雑誌（創刊当時は『ふぁんろ～ど』）であり、最大の特徴は誌面のほぼ9割が読者投稿で成り立っているところにある。読者の呼称はローディスト。ちなみに競合誌的存在である『月刊OUT』の読者はアウシタンである。
読者から送られてきたやイラストや漫画（イラストや漫画は二次創作、オリジナル双方が乗っていた）、ネタなどで構成されているのだが、採用される頻度の高い常連投稿者が読者の中でスター化・アイドル化・キャラ化していくというのも特徴だった。
漫画家・一本木蛮は『うる星やつら』のラムのコスプレの投稿で注目をあつめ、1982年に『ファンロード』誌上で漫画連載を始める。その後に他の雑誌で漫画家としてデビューしたのだが、このように常連投稿者（一本木先生の場合は正確には常連投稿者ではないのだが）が『ファンロード』で連載を始め、やがてプロとしてデビューしているということもあった。
私が知っている『ファンロード』はあくまで80年代の『ファンロード』なので、自分が小学校高学年から高一くらいまでのそれなので、あくまでも当時のこと（それ以降はよく知らない）と思って読んでいただきたいのだが、あの雑誌は内輪ノリの塊のような雑誌で、初めて読んだ人の中には「何が書いてあるのかよくわからない」という反応をしめす人も多かった。拒絶反応をしめす人もいれば、内容がわからなくても雰囲気が面白いと感じて読みだす人や、「あれもわかる、これもわかる」と嬉しくなって読者になる人もいて、まあ、自分が読みだしたころのロードは非常にクセの強い読者に支えられた非常にクセの強い雑誌だった。
初見殺しの『ファンロード』
初見殺しの一例をあげると〝アミバ〟の扱いである。アミバとは漫画『北斗の拳』に登場した悪役でありトキの偽者の自称天才の人のことだ。特に物語上で大きな活躍をするわけではない。
「シュミの特集」というメインコーナーがあり、一つのテーマ（一つの作品を扱うことが多いが、一つのジャンル）で毎月特集が組まれ、イラストと大辞典（辞典風に項目が並べられたネタコーナー）で成り立っているのだが、どの特集にも〝アミバ〟の名前がある。それが、まず意味がわからないという人はよくいた。〝アミバ〟に限らずそういう『ファンロード』の中だけで通じる意味が付与されたキャラクターも多かった。
