異国での中国人女性の起業根性
私立愛嬰幼保学園を創業した中国人女性は日本人と結婚し出産したが、育児に関して相談する人が誰もおらず、一人で子育てし苦労しまくっていたので、知り合いの中国人女性と一緒に育児サークルを始めたのが保育園になったという経緯である。一時期は自殺まで考えたというほど深く悩んだ過去も入園案内に明記されており「ドキュメント女ののど自慢」的なストーリーで泣かせてくる。最初は許認可のことも知らず、自治体の人にも正直に話して、一つ一つ課題をクリアしていったそうだ。なんというバイタリティとやる気だろうか。
しかも女性も働きに出て社会と接触を持つのが重要との考えで、大変手頃な価格の一時保育を提供し、24時間保育もある。24時間保育は食事も全てついていて、1カ月連続で預けても13万円代と破格。これはアメリカやイギリスの3分の1の値段だ。補助金が出ているとしても、この人手不足な時代に相当な企業努力をしていると思われる。
お客様主体、需要をきちんと読み取り、求められるサービスを提供する。まさに商売の基本である。それを言葉も習慣も違う外国で、子持ちがやるというやる気と根性。ネットで動画ばかり見ている怠惰な日本人は学ぶべきだろう。自分自身が海外で子どもを育てている経験や、友人や知人たちの悩みを考えると、この中国人女性が保育所を始めたのは納得である。
外国人親が移民してくると、周囲に親戚も友達もいない。配偶者が現地人だと言葉の難しさや習慣の違いなどを理解できない。さらには義理の家族との軋轢などもあり悩む。働きに行けず、社会から孤立し、金もないということもあり、鬱になる親も結構いるのだ。こういう感じで穏やかに子どもも親も日本に馴染んでいくような保育施設の需要はもっとあるだろう。
マスコミが「ヤバい」と煽る日本の移民集積地帯・蕨は、かなり日本びいきの地域だった。我々取材班はマスコミの偏向報道に躍らされただけだったのか。後編では、クルド人が暴れまわっていると噂の“ワラビスタン”の本拠地に潜入する。
文/谷本真由美(めいろま)
初出/実話BUNKA超タブー2023年11月号