──うちはもうユニクロじゃないぞって宣言ですね。
「そもそもユニクロって、海外の労働者が低賃金で働いてくれてるわけでしょ。いいものを安く売るためには、誰かが割を食う。それはラーメン屋も同じ。美味しいラーメンを安く売るために、店主が朝から晩まで12時間以上労働して、下手したら奥さんまで駆り出すような話もあるわけじゃないですか。幸せじゃないですよね。10年、20年は続けられないと思う」
──ラーメン屋ってブラックな労働環境が当たり前なんですか。
「私は月に500時間ぐらい働いていた時期があります。1日17時間弱ですね。それで月の利益が50万~100万円。時給換算したら、1000円~2000円。やばいですよ。当時は感覚が麻痺していて、それが当たり前だと思いこんでましたけど、いまは違う。単価をあげてしっかり売れば、労働時間を減らせるし、バイトの時給も上げられるし残業代も出せる。うちはランチ営業をやめましたが、売上は増えていますよ」
客と飲食店は対等であるべき
──甲斐さんは、ネットでの情報発信に積極的ですけど、突き詰めると、何をしたいんですか?
「私は炎上キャラと見られがちだけど、ちゃんと考えてます。語気が強めな、少しだけ偏った意見ではあるけど、『それも一理あるね』と感じる人が半分くらいいるさじ加減を狙っています。賛否が分かれるような話題を提供すると、あとはオレが手を加えなくとも、勝手にみんな盛り上がってくれるわけです」
──火元の近くにいるけど、自分は燃えていない!?
「そう。私は燃えてない。傷ついてない。知名度も売上もアップしている。私の問題意識は一貫していて、『飲食店の人間がお客さん側にノーを突きつけることはアリかナシか?』なんですよ。だから表面上は話題が違っても、言っていることは『お客様は神様じゃないよ』の繰り返し」
──ラーメン屋のオヤジのくせになんて生意気な!
「日本はまだ買い手市場で飲食店の地位が低いし、その中でもラーメン業界は下なので、反発はなおさら。だからこそ、私の発信はよく燃える。業界内で立場のある某有名店主も、『オレは公式には言いにくいから、甲斐が言えよ』みたいな態度だったりします」