「このプランは自民党、財務省、厚労省などで以前から内々に方向性が決まっていたもの。現役世代が少なくなって、社会保障関係の財源が厳しくなっていく。だから、いろんな形で負担を増やしていこうと常にチャンスを狙っていた。そんな中、ちょうど103万円の壁を撤廃して手取りが増えるということで、若者やパート主婦は喜ぶ。そこで、たくさん稼げるようになるから、その分社会保険料も払えるようになるので、同時にそれを納めて将来の年金など備えにもなるという理屈だ。ただ、総合的に計算すると103万円のほうは非課税枠が広がりたくさん稼げるようになっても、106万円のほうは社会保険料を取られ、結局手取りが少なくなるケースがどんどん出てくることになる。詐欺みたいな話だ」
政府与党は年金や医療の財源不足を補うため、保険料の負担を増やす機会を虎視眈々と狙っていたというのである。
社会保険の負担が増えることで苦しくなるのが低所得者たちだ。前出立憲の政調幹部が続ける。
「社会保険料は年収の約15%。仮に、ある低所得者の年収が約105万円とする。約16万円が社会保険料として給与から源泉徴収され手取りは90万円に下がる。この取られた社会保険料を計算してみると、たとえば、この人が時給1100円だったとすると約145時間分、週20時間働いたとすれば7週間分、つまり約2カ月分の働きが全部社会保険料として消えてしまうことになる。仮に、これまで年収や従業員数の制約で加入対象外だった学生やパート、短期間労働者などが週20時間で加入が義務付けられるとしたら、そういった所得の低い人にとってはかなり厳しいものになる」 また、厚生年金の徴収は企業と折半なので企業の負担も増えてしまう。
社会保険料を上げる狙いも
石破茂首相は、今開かれている臨時国会の所信表明演説で、「103万円の壁は、(税制調査会による)令和7年度税制改正の中で議論して(額を)引き上げる」と表明した。しかし、そう簡単に決着するのか。 自民党ベテラン議員は言う。
「一筋縄ではいかない。国民民主党は最低賃金の上昇率をベースに103万円から178万円に引き上げるべきだと主張しているが、そこまで本当に上げて問題ないのか、議論が必要だ。党内では物価の上昇率を基本に、引き上げ幅を決めるべきだという意見や、所得に応じて控除額を変更する案を主張する議員もいる。まとめるのには時間がかかる」