また、103万円の壁については地方自治体から深刻な声が上がっている。 103万円から178万円に引き上げた場合、その分所得税・住民税が免除され税収減となってしまう。 地方自治体は住民税分4兆円が減ると見込まれ、税収減の影響を受ける全国の都道府県知事はそう簡単に「壁」の引き上げを飲むわけにはいかない。
河野俊嗣宮崎県知事は「地方財政に甚大な影響が生じる可能性がある。丁寧に議論を進めていただきたい」と要望を出し、山梨県の長崎幸太郎知事は「103万円の壁の減収の補填はマスト」と述べている。 鳥取県の平井伸治知事は「103万円、基礎控除を上げること自体を問題にしているわけではない」としながらも「住民の暮らしを守るために我々は責任を果たしたい。穴が開いた財源について国がちゃんと考えろ」と訴えている。
12月中に、石破首相の言う税制調査会でどんな具体的な結論になるか依然、不透明だ。
確かに国民民主党が打ち出した「103万円の壁」は税制に一石を投じるもので、国民が税制について学び考えるきっかけを作ったとは言える。ところが、この機に乗じて社会保険料を上げようとする自民党や財務省、厚労省など霞が関のいつものカラクリも見える。
裏側では、「壁の撤廃」という似た表現で社会保険料をより多く搾取して、結局は手取りが減ってしまうケースも出てくることになりそうだ。
103万円の壁は、引き上げればそれで終わりではない。税収減の地方自治体にどう補填するか、そして何より社会保険料なども含め本当に手取りを増やす政策になるのか。国民は厳しく見守る必要がある。
文/村嶋雄人