2作目と3作目はテーマに対してやや反則気味だが、次は『世界地図の間(ま)』。
この作品は「初回がとんでもない」というよりは「単行本丸1冊使って、第1話が終わらないまま完結」という特殊な作品だ。
どこかの星で、なんらかの切迫した事情で目的地に向かう3人の男たち。男たちは街の風景を見て目的地を探し、飛行場で謎の人物とすれ違い、川を船で渡るための交渉をし、渡った先にある建造物に入り、その中で何冊か本を読み、酒を1杯飲み、中庭を散歩して池の中に沈んだ船を発見し、その船を取りに行くことを断る。これで終わり。「1巻で打ち切り」ではなく、「1冊まるごと使って1話の序盤だけを丁寧に描いて完成させた本」だ。こう聞くと「内容が少ない・薄い」と思われる方もいるかもしれないが、作中に登場するすべてのキャラクター、建造物、本などのデザインが凝りに凝っており、非常に読み応えのある1作だ。
最後は架空の新連載の第1話だけを集めた短編集『まんカス』。
収録されるすべての「第1話」の続き(国歌斉唱で駄々をこねて腕がちぎれた左翼ボクサー、ライブの休憩中にトイレに行ったが、下半身全露出状態のまま服がほどけなくなり、そのままステージに戻る時代劇サンバ歌手・けつだいらまん等)がその後どうなったのか、なぜこんなことで20年間脳のメモリーを圧迫させられなければならないんだという気持ちになること間違いなしなので是非ご一読いただきたい。
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文/劇画狼
画像/『サバイビー』(1)(つの丸/集英社)
初出/『実話超BUNKAタブー』2025年7月号