国際エネルギー機関(IEA)は2023年の報告書で「太陽光は現在、世界でもっとも安価で拡張可能な電源」と位置づけており、日本でも太陽光発電の増加によって、電力会社の調達価格は1kWhあたり10円台にまで下がっている。火力発電の燃料費高騰を考えれば競争力が十分にある水準だ。
ここまで言えばもうお分かりだろう。太陽光発電は「マシな部類」どころか、今の段階では最も合理的な再生可能エネルギーなのだ。そんな現実を無視して「自然破壊の元凶」とレッテルを貼るのは、冷静さを欠いたプロパガンダでしかないだろう。
批判派が執拗に口にするもうひとつの批判が「補助金に群がる利権産業」というものだ。
もともと太陽光発電の導入は東日本大震災後の2012年、時の民主党政権が始めた固定価格買取制度(FIT)がきっかけだった。当時は復興のどさくさもあって、有象無象が補助金目当てで業界に参入し、過剰な高価格買い取りが問題化。補助金なしでは成立しないという批判もあった。
しかし現在では制度も整備されており、「補助金バブル」はすっかり過去の話になっている。
「補助金を批判するのなら農業補助金も公共事業も同じ税金の再分配です。太陽光だけがズルいと叩かれるのは合理性を欠いています。それに東京都が推進した住宅向け太陽光パネル設置の補助金事業のように、結果としてエネルギー自給率を高めることに成功している事例も少なくありません」(大手ビジネス誌記者)
ネットでは「外資に土地を売り渡している」「中国企業に乗っ取られている」「パネル利権で政治家が儲けている」「中国製パネルは危険」「有害物質が土壌に漏れる」といった荒唐無稽な言説まで飛び交っているが、ここまでくるともう笑うしかないだろう。
「農林水産省の調査によれば、外国資本が所有する森林は全国のわずか0.04%で、うち大半は移住者が農業用地として取得しているものです。これで『国が乗っ取られる』と騒ぐのは大げさでしょう。中国関連もほとんどがデマで、たとえばソーラーパネルに安価な中国産が使われているのは事実ですが、安全保障への懸念は単なるイメージでしかありません。有害物質についても、昔と違って現在の主流はシリコン系パネルで安全性が大幅に高まっており、廃棄リサイクルの制度も整いつつあります」(全国紙経済部記者)
