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日本兵のほうの小野田さん:ロマン優光連載368

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小野田達は情報から隔絶されていたわけではない。終戦後まもなくは米軍が投降を呼びかけるビラを撒いたり、たびたび残留兵捜索隊(小野田の家族も何度か参加している)が訪れビラを撒いたり、日本の新聞や雑誌を現地に残しており、それで情報収集を行っていた。

また、住人から盗んだラジオでNHKやオーストラリアの日本語放送を聴き、東京オリンピックや皇太子成婚や横井庄一の帰還なども把握していた。

そういった情報は事実として受け入れながら、外交や軍事の情報だけはアメリカの謀略によるものだとして信じず、現在の日本はアメリカの傀儡国家であり、本来の日本は満州に亡命政権を打ち立てていると根拠のない説を打ち立て信じていた。

ビラに誤字がある。ビラの紙質が悪い。小野田さん一家という写真に近所の人が写っているのはおかしい。

全ては敵国の謀略機関の陰謀であるとし、そのような信じないための理由としかいいようのない無理矢理な理由を作っては信じることを拒絶していたようだ。

家族のよびかけを近くに潜んで観察している時も、謀略機関がよく似た人間に物真似をやらせていると思ったという。

小野田の家族を探し当て、雑誌や新聞を大量に偽造するような組織がやらないであろうミスや変な行いを無理矢理発見しては自分を納得させているような感もあるし、そもそもルバング島というさして重要でないポイントに潜む数人のために、そんなことをするだろうか。

満州亡命政権があり、戦争が継続し、選曲が有利にすすんでいるとするなら、なぜ亡命政権による放送などがないのか。

客観的にみれば、小野田は自分に都合のいい情報だけを信じ、都合の悪い情報を無視し、点と点をつなぎあわせて自分に都合のいい説を組み立てていただけであり、陰謀論者のそれによく似ている。

そういえば、陸軍中野学校二俣分校出身ということを語られることが多い小野田だが、実際にいたのは3か月である。それでどれほどの訓練をうけられたのか疑問であるし、過大評価されている部分はあるのではないか。

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ヒマラヤの雪男を探すなど世界各地を冒険していた23歳の鈴木紀夫が、1974年に小野田の捜索に単身訪れた際にこれと接触、その際に上官の命令解除があれば投降することを約束、谷口義美元陸軍少佐の名前を挙げる。

後日、鈴木は谷口を伴って再び小野田のもとに訪れ、谷口が任務解除を伝達したことで投降したのだが、谷口は小野田の直接の上司ではないし、小野田の主張する原則からすれば、その権利はないはずだ。谷口との会見の際の写真とされているものは、実はその時に鈴木が撮った写真の出来が悪く、あとで撮り直したものだという。

ようするに形式だけであり、本当は投降したかったのではないか。

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