男女差別は決して減っていない
マキエ でも、やっぱり男女差別って昔と比べても減ってないんですよね。ぶつかり男とかもそうだし、日常全部男女差別だっていうふうに感じますけどね。電車の脚広げ男もそうだし、男性って人に気配りをしなくて済んでるわけですよ。女の子は小さい頃から、そういうことをしないといけないように育ってる。表面的には職場にヌードのカレンダーを置かないとか、こういう会話はセクハラになるとか、そういう表面的なところは変わってきているけど、基本はたぶん変わらない。たぶん今どきの若い男にも男女差別の意識はあるし、逆に「男だから、こうしなきゃいけない」とかもある。
ドル 「男だから」って言われることが多いから、さらに女性に憎悪が生まれるって仕組みですよね。
マキエ 男だから、女だからっていうのがある限り、男性は女性を憎悪し続けると思う。昨今のおごりおごられ問題でも、「女はすぐに男にたかる」とかいうけど、関係性の問題だろと。おごらないと女とメシに行けないのは、お前の人格に問題があるからだよ、と。
大泉 でもわたしは、その男女差別のところで食っていたりもするんです。女流作家だから仕事がある。わたしが男の作家だったらデビューすらできてないかもしれない。女流です、女枠ですって言ってるけど、それは差別に加担してるっていう負い目がある。
マキエ それ言われたら、わたしだって女体持ってるから作品作れるんだっていう。でも、ちょっと話は違うけどセクハラに関していえば、マキエマキになってから、逆に減りましたね。前の仕事の時のほうが、忘年会でべたべた触られるとかすごくありました。あとは打合せの場所にホテルを指定されて、しつこいから仕方なく部屋に行ったら、いきなり抱きしめられて、「月50万円でどう? こんなつまんない写真の仕事してるよりいいでしょ」って言われて。月50万円以上稼いでたんですけどね。
ドル わたしもドルショック竹下を名乗るようになってからはセクハラは受けなくなって、むしろそれ以前は編プロの社長に「不倫しようよ」とか誘われたりしていました。やっぱり看板がない状態のほうが、セクハラには晒されやすいと思います。
大泉 わたしは出版社でバイトしていた時に打合せ中に編集長がち●こを出してきて、オ●●ー見させられたことあります。まぁ、#MeToo案件は、みんな経験してますよね。だからツイッターで男性嫌悪を巻き散らしているフェミニストのツイートに、時に感情移入することもあるけど、でも基本的にわたしは男性が好きなので、そんなに細かいところまで責めてあげんなやって思うんですよ。それに、わたしはよくいわゆる一般の女性の性の話を聞くことが多いんですが、意外とみんな性的なことを楽しんでる。でもそれをわざわざネットで発信したりはしていない。だから、そっちの声を世間に届けることで、性のことをもっと楽しんでいいんだって思える女性が増えてくれるといいなって思うし、それがフェミニストである、わたしの役割だと思ってます。みなさんはそういうのってありますか。
マキエ わたしの展示に来た人や、作品集に書いてあることを見て、すごく救われたっておっしゃる方がすごくいらっしゃるんです。わたしの作品のモデルをやってくださってる佐田茉莉子さんも、わたしの書いていることを見てAV女優になろうって思ったそうなんです。だから、わたしはフェミニストだからこう、というよりも、個々を認めようよっていうようなことを発信したいですね。
ドル 今までの自分にも縛られたくないし、かといって人の言うことを聞きたくもないし、自由には責任が伴うってことをわかった上で自由にやっていきたいし、あとは子どものことを思うと、少しでも居心地のいい未来を残せるようにはしていきたいですね。
神田 60歳になって身体が本当の閉経状態になった時に、セックスっていう試合をやる気力がなくなっちゃったんですよ。やる気のないわたしは生きてる価値がないなってこのコロナ禍の3年間に思ってたんですけど、でも、まだ実は男にチヤホヤされたい気持ちがあるってことに気が付いて。ちょっとこれからまた一花咲かせようかと。
大泉 我々は女としての性も性表現も楽しんでいきましょう。
構成/大泉りか
初出/実話BUNKAタブー2023年7月号
PROFILE:
大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年東京都生まれ。SMショーのモデルやキャットファイターなど、アンダーグラウンドな世界にどっぷりと浸かった20代を過ごす。2004年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)で作家デビュー。以後、官能小説や女性向けポルノノベル、女性の生き方をテーマとしたエッセイなどの執筆を中心に活躍。近刊はルポ『ホス狂い』。
PROFILE:
神田つばき(かんだ・つばき)
濡木痴夢男の緊縛美研究会に参加以来、自らのプレイを撮影したハードSMビデオ制作&販売、エロライターなど少数性癖者として活動。現在はAV倫理審査に携わる一方、東京女子エロ画祭主宰、団鬼六作品ほかドラマAVの脚本を多数執筆。いち主婦から変態表現者への半生を私小説『ゲスママ』としてコアマガジンより刊行。
PROFILE:
ドルショック竹下(どるしょっくたけした)
漫画家、新宿ゴールデン街Sea&Sun店長。2003年に『漫画ナックルズ』誌にて『挿れるもの拒まず』でデビュー。以来、潜入ルポ漫画、コミックエッセイなどを執筆。すぐイクよ出るよ、ちげる&バーガーwithショックなどの音楽ユニットにも参加。
PROFILE:
マキエマキ
1966年大阪生まれ。1993年よりフリーランスの商業カメラマンとして雑誌、広告などの撮影を手掛ける。2016年より「昭和のエロ」をテーマに、「和製B級シンディーシャーマン」を自称し、セルフポートレート作品を発表し続けている。