さて、この漫画が描かれたのは90年代の中盤だが、2009年甲子園夏の大会で、我が新潟代表の日本文理高校が決勝に進出し、中京大中京と対戦したのだ。新潟代表がベスト4にまで進出した記憶はそれまでなく、まさか決勝に進出するなど考えられないことだった。もしかして優勝なんて、と思っていると7回の時点で10対3の大差をつけられていた。ところが8回に1点、9回にも得点を重ね、10対9にまで迫る展開となり、これって『かんとく』の最終回じゃんと『かんとく』を思い出して涙が出るとともに、『かんとく』どおりの展開では逆転はできない。圧倒的戦力で何人も投手を交代させる中京大中京に対して日本文理は伊藤投手が最後まで投げている。最後は3塁に同点ランナーがいてツーアウト、見事にヒット性の打球はライナーで3塁手があっさりキャッチして試合終了、準優勝で終わった。甲子園と地区予選の違いはあるし日本文理は新潟では強豪校だ。しかし、まさか甲子園決勝で『かんとく』の最終回が再現され驚きかつ感動して泣けたのでした。
作者のコージィ♡城倉さんは、その後も野球漫画で大活躍し『ゼニグラ』シリーズを森高夕次名義で原作、を手がけ、また『キャプテン2』ではちばあきおさんの画風を完全にトレースし、続編を手がけるなど漫画の鬼っぷりを発揮している。一度お会いした時は、青年実業家のような佇まいで漫画産業でコンテンツをプロダクトしているような感じもしたが、漫画の実力者であり異能者だ。
藤本タツキさんの『ルックバック』をパクって『ゲットバック』という男子2人の漫画家漫画を描いたので何度も読んでいる。藤野が京本の家を訪ね、2人が初めて出会った際、京本が藤本の漫画を大絶賛する。藤野は、京本の態度が嬉しくて雨の降る農道をびしょぬれになりながら踊りながら帰宅する。創作に対しての2人の思いの切実さや純粋さに胸を撃たれて読むたびに泣いてしまいます。
大島弓子さんの『秋日子かく語りき』は女子高生の体に中年のおばさんの魂が入り込むファンタジーだ。2人で交通事故に遭い、秋日子が1週間限定で肉体をおばさんに貸す。秋日子の肉体を借りたおばさんは、おばさん死後の家族との絆を確かめるため行動するが、そんな秋日子に周囲は困惑する。わずか50ページの短編でありながら、死、家族、友情、淡い恋愛が描かれ、それらが見事に収束する結末に感動して読むたびに泣いてしまいます。
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文/古泉智浩
画像/『かんとく』6(コージィー城倉/講談社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2026年9月号
