東京都知事選挙において蓮舫氏の得票を上回って多くの人を驚かせた石丸伸二氏。「首相になった人の選挙区から出る」「立民の代表の選挙区で出る」などとうそぶく石丸氏、今後の動向が注目されるが、立憲民主党所属の衆議院議員米山隆一氏は「石丸現象」をどう受け止めているのだろうか。
無名の候補が都知事選2位に
7月7日投開票の都知事選挙で、38歳と若くして安芸高田市長となり、在任中過激な言動で注目を集めていたとはいえ、全国的には無名だった石丸伸二氏が165万8363票を獲得し、3位の蓮舫氏に40万票余りの差をつけて2位となったことで、にわかに注目を集めてます。最近はあまり見かけなくなったとはいえ、選挙直後はあちこちのワイドショーに引っ張りだこで、番組での独特な言説が「石丸構文」として賛否を呼び、様々な論評の対象ともなりました。彗星の如く現れ、彗星の如く尾を引いている石丸氏にまつわる「石丸現象」と、氏の今後について論じたいと思います。
まず、お恥ずかしながら私は、都知事選挙の中盤となるまで、石丸氏にはほとんど注目していませんでした。議会で居眠りした議員に「恥を知れ、恥を!」という過激な言説を投げかけたり、道の駅への「無印良品」の出店計画で下した専決処分が否決されたりという「騒動」はニュースなどで見聞きして知っていましたが、全国に常に何人かは存在する「お騒がせ市長」の1人だろうくらいの認識でした。東京都知事選挙が始まると、私は立憲民主党の議員として蓮舫候補を応援しましたが、「石丸候補が伸びている」というニュースを聞いても、「まあ3位の票が少し増えるだけ。どちらかと言えば小池知事の票を食うだろうから問題ない」と思っていました。
ところが、選挙戦中盤の世論調査を見て、青ざめました。調査によっては石丸候補が蓮舫候補を上回っており、特に無党派では、石丸候補は小池知事を上回る1位、蓮舫候補は3位に沈んでいたのです。驚いて「何が起こっているんだろうね」と、近くにいた秘書に問わず語りに話し掛けたら、「代議士、YouTubeを見たほうが良いですよ。石丸さんの演説、凄く良いんですよ。僕の友人でも、『絶対石丸だ』『石丸さんこそ政治を変えてくれる!』という人が何人もいます」と言うのです。そこで初めて、慌ててYouTubeで石丸氏の演説を確認したのですが、まあ格好と画像は良いとして、正直抽象論と自分語りだけで、私にはその良さが分かりません。不気味な不安を抱きつつ「そうはいっても最後は蓮舫候補が2位にはなるだろう」と思い続けて選挙戦を戦い、ふたを開けたら前述の結果となっていました。
石丸伸二大健闘3つの要因
なぜこのようなことが起こったのでしょうか? 私はこの石丸現象は、①社会の分断の進行②既存政党の現状認識の欠如③石丸氏の戦術的成功、の3つが合わさって実現したものだと思います。
上記の通り私は選挙戦中盤まで石丸氏の躍進を認識していませんでしたが、選挙投開票日にネットの選挙特番に出て解説することになっていたので、解説する以上は各陣営を見てこようと思い、選挙戦最終日に、小池知事、蓮舫候補、石丸候補の各陣営の演説を聞きに行きました。その時の私の感想は「小池さんは演歌のリサイタル、蓮舫さんはロックのライブ、石丸さんはJ-POPのコンサートで、全く違うジャンルの3人が、全く交わらないまま、東京歌謡大賞を争っているような選挙だ」でした。