「ここ数年で自分から出たがる女の子が本当に増えて、強要や詐欺まがいの勧誘が非常に減ったことは間違いありません。ただ僕の立場では、本意ではなく出演させられる人が今後もう絶対に出ないと断言はできない。だから3番目の請願要綱〈行政による、出演者の地位向上・人権保護のための業界構造の実態調査〉が常に必要なんです。
先日我々の会が主催したAV新法を考えるシンポジウムで、アメリカからリモート出席してくれたMARICAさんが、『こちらのポルノ女優は、みんな分厚い契約書を自分で持ち歩いてて、分厚すぎるもんだから最近は電子化されてスマホに入ってて、そうやって自衛してます。とにかく契約条項が細かい。ハードな撮影の前には毎回、自分の全身の裸の写真を自分で撮って、この傷やアザは前からあったから今回の撮影でついたのではない、それ以外の傷が撮影でついちゃったらギャラは増額、次の撮影までに治らなかったら制作会社同士で話をつけて女優のマイナスにならないようにしてくれとか、とにかく自分の体に関わることを全部自分でやるのがアメリカのポルノ女優です』と発言した。」
「そのあとで、やはり登壇してくださったビジネスの法律に詳しい(ご専門はマクロ経済学)明治大学の飯田泰之教授は『みだりに新しい法律を増やして、ある特定の業種を規制で縛るのは差別です。業界と行政がちゃんとやれば、現行法だけでAV女優の人権は守れるし逸法行為も取り締まれるはず』とおっしゃってくれた。それを聞いて僕が思ったのは、我々はAVに出演してくれる女性たちを今までずっと大人として扱ってこなかったのかもしれないなってことです。
『脱いでエッチなことさえしてくれてればいい。それ以外は全部こっちでやるから』って姿勢で、決して対等ではなかった。彼女たちに責任を持たせることをしてこなかった。だからトラブルがたくさん起きたんです。業界のことをよく知らないで法を急いで作った議員さんたちは『AV女優は全員、子どもみたいなもので、だまされやすくて、そんな人たちにカメラの前でエッチなことをさせるなんて』と主張してるわけで、我々はその無理解と過保護ぶりに怒ってるんだけど、もしかしたら我々制作側も逆方向から同じように女優を子ども扱いしてきたのかもしれない。
だとしたら、新法の不合理な部分を改めてくれと請願する以上、やる気とエロさは当然として責任感も主体性もあり、業界の裏まで知る気がある女性がカメラの前でセックスするようにならなければならない。そうでないと我々が言ってることは空論になってしまう。でも、若い女優さんたちの意識の変化を見ていると、そういう時代はもうとっくに始まっていて、いい意味で引き返すことはできないと思います」