政治的活動に身を投じる理由
政治的な活動からは縁遠い印象がある二村氏が重い腰を上げたことに、驚きを表明するAVファンも多い。なぜ今回に限って政治運動に身を投じようと考えたのか。
「まあ、これは誰かがやんなきゃいけないことだったんですけど、僕が年寄りで、あと監督としてヤキが回っててヒマだったからですね(笑)。だって今、真面目で優秀なAV監督は毎月5本以上とか撮影してますよ。よく死なないなと思うけど、そのくらい働かないとご飯を食べていけないみたいなんです。それも制作費が極限まで落とされてる業界構造がおかしいんだけど、ともあれ、みんな忙しいんだから、やりたくない人はやらなくていい。やりたい人だけが一緒に声を上げてくれたらいい。そういう意味では、ティッシュ配りに参加してくださってる女優の皆さんと、交代で参加して力を貸してくれてるソフト・オン・デマンドのみんなには本当に頭が下がります。」
「あと、デモ行進はマジで楽しいので、だまされたと思って業界の人だったら1回くらいは、それに一般のAVファンの皆さんにも、ぜひ参加してほしいな。もちろん往来で『エッチなビデオの未来を守ってください!』『AV女優の声を国会に届けよう!』なんてでかい声を出しちゃってさ、どうかしてることをやってるって自覚はありますよ。本来、我々はゾーニングされてなきゃならない存在です。でもね、今だけ、このタイミングでだけ、本当にすみませんけど声を出させてください。今やらないと手遅れになってしまう。今年の6月でAV新法が良くなるか、現状のままか、もっと悪くなるかが決定してしまう。タイムリミットなんです」
法律を変えるために動くからには、政党や政治家との絡みも必然となってくる。そのあたりについてはあくまでも〈超党派〉なのだと二村氏は主張する。
エロこそが右と左を結び付ける
「なんだか知らないけど今、表現の自由とかポルノ賛成って言葉は、あんまり左の人に愛されてないみたいで、そういうこと言うのはオタク、オタクすなわちネトウヨだろみたいな……。もちろん左の人がポルノに反対するのは被害女性を守るため、不愉快に感じる人の『見ない権利』を守るためということなんでしょうけど、自ら選んで出演してる女性が現に存在してるという事実のみならず、エッチなコンテンツを愛好してる女性もマイノリティも世の中にはたくさんいるわけで。
被害者を絶対に出さないというのは僕らも目指すべきところで志は同じであるはずなんですが、そもそもエッチな表現は害悪で業界の男は全員悪人だという思想にとらわれるあまり冷静に現状を見れなくなって、人権を守らなきゃいけないはずのリベラルが逆に弱者の人権を侵害することが起こりえる。」