駕籠 はい。3分の1ぐらいはそれっぽい要素を入れとけばわりとOKなところがあって。もうなくなっちゃいましたけど東京三世社の雑誌で主に描いてて、そこの編集さんが特に緩かったのかもしれないですけど、それで僕が自由にやってたところもありますね。
——ふつうのSEXシーンを描くのに抵抗があった、みたいな話をされてましたよね。
駕籠 初めはありました。東京三世社がSF寄りの雑誌(78年に創刊された『少年少女SFマンガ競作大全集』。後に『SFマンガ競作大全集』『SFマンガ大全集』『月刊WHAT』と移行し85年に休刊)をやってて、ホントはそこに描きたかったから持ち込みして連載できたらいいなと思ったんですけど、それが潰れちゃいまして。いわゆるど直球なエロ雑誌のほうは残ってたんですよ。「じゃあこっちでやってみる?」みたいなことで。そうなるとエロを入れなきゃいけないので、エロを入れつつ、初めはわりと素直に、やっぱりお金にしないといけないんで。
——ふつうに抜けそうなヤツをちゃんと。
駕籠 なるべく僕なりに抜けそうなヤツを入れつつ、徐々に徐々に『家畜人ヤプー』的な感じをちょっと入れていったりして。これも手探り状態ですよね。ネームの段階で初めは「ここはちょっと……」みたいなのが、やっていくうちに、「まあいいだろ」みたいな。その「まあいいだろ」の割合がだんだん増えてきて、ある程度エロを入れたら僕のやりたいことがほぼ通るような状態になってきたっていうのが、その雑誌に関してはしばらく続いてて。そこで、それ以前は考えてなかった自分の世界が、エロを入れることで逆に構築されてきたところがありますね。
——商売的にやらざるを得なかったことがちゃんと自分のキャラクターになっていったわけですね。ストレートなエロではなく、エログロ的な方向でやればイケるぞっていう。
駕籠 そうですね、自分なりのエロ要素というのがわりと構築できてきたというか。自分も書いててそのへんが性に合ってたという。もともと筒井康隆が好きなんで、そっち系はむしろ大歓迎って感じだったんですけど。
——だんだんウンコ要素が強くなっていったきっかけはなんだったんですか?
駕籠 ウンコ要素は……三和出版の『COMICフラミンゴ』がデカいですかね。変態寄りのエロ漫画雑誌で、もともと人体改造とか、当時はふたなりが流行ってた雑誌なんですけど、要するに描く媒体を増やしたいわけですよ、お金にならないので。そのなかのひとつとして『COMICフラミンゴ』に持ってって、一応それ以前に単行本は出してたんで「ああ、あなたですか。じゃあ是非やってください」みたいな感じになって、変態雑誌なんで、じゃあウンコだな、みたいな。
——そこに思い入れがあったわけでもない?