駕籠 ウンコを出してもそんなにガチな感じは伝わってなかったんですかね、ひょっとしたら。インタビューでも、自分はべつにウンコを食べるのが好きなわけじゃない、みたいなことは言ってたような気がするので。逆に卯月妙子さんみたいな、ガチでそういうことをやって、わりと性癖ガチな感じの人はファンもガチな人が多かったりするので。僕はあんまりそういうのは、ただメールでリスカ写真とか送られてきたことはありますけど。
——そういうファン層がついてた、と。
駕籠 特に『エロティクス』以降は、いわゆる病んじゃってる系の女の人もけっこう読んでたんで。僕はそういう系のメールはウェルカムなところもあるんで。その頃はもう盛り上がってなかったかもしれないですけど、いわゆる悪趣味系の流れをまだ引きずってて。
——リスカを見るとふつうに引きます?
駕籠 リスカは見てると慣れちゃったところもあって。僕、一時期三軒茶屋に住んでたんですけど、卯月さんが歩いて5分ぐらいのところに住んでたんですよ。たまにウチに遊びに来ることがあって、目の前で腕を刺してるんですよ、半分遊びみたいな感じで。
——遊びに来たついでに(笑)。
駕籠 あれ何がきっかけだったのかな。
——駕籠先生が何かしたわけではなく。
駕籠 ええ。なんか急に、「私こんな感じでできるよ」みたいな。そのときはナイフでもカッターでもなくて、シャーペンをガスッと、目の前でやられて。僕もそういうの見せられて麻痺しちゃったかもしれないです。
——ストリップ小屋で舞台に立ちながら自分で首を切るぐらいの人ですからね。
駕籠 そうですね、首切ったり歩道橋の上から飛び降りたり、ホントにガチな感じの人なんで。彼女はガチで、僕は性癖自体はわりとまともなつもり、どちらかというとそういうのは離れた感じで見てるので。
——読者としては駕籠先生もそっちであってほしい、みたいな願望もあったんですかね。
駕籠 ああ、それはあるかもしれないですね。卯月さんがわりと僕のことガチなんじゃないかと思ってた時期もあるので。『エロティクス』で描いてた男性陣はあんまりガチな人いなかったんじゃないかって気はしますけど。女性陣はもともとAV系にいた人とか、僕のアシスタントに来た人も、「実は体売ってました」みたいな人がいたりして。僕はどっちかというとそういう方向にあまり触れてなかったんで、逆にビックリしましたよ。
——作品がこうだからいろいろ思われるかもしれないけど、基本、常識がないと描けない部分ってあるじゃないですか。