時間が来て蛭子さんが奥さんやスタッフの方たちとギャラリーを出て帰路に着くのを見送った。
そしたら、奥さんからメールが着信したのだが、別れた後、蛭子さんがポツンとひとことこう言ったという。
「今の、あの根本さんは本物か?」
ーーと、ここで私はおののいた。
哲学的な問いかけとも言えるがそれ以上に、私自身が実際は認知症で、「正常」な蛭子さんが、私がギャラリーだと思っている施設に見舞いに来てくれたのかもしれない。
世界の認識が180度ひっくり返る戦慄の感覚。
これはまんざら戯言でもない、何しろ「ギャンブルに全然興味がない蛭子能収」という有り得ぬ存在からそうつげられたのだ。
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PROFILE:
根本敬(ねもと・たかし)
特殊漫画家、エッセイスト。1981年に、『月間漫画ガロ』で漫画家デビュー。代表作に、漫画では『生きる』『怪人無礼講ララバイ』『龜ノ頭のスープ』、活字本では『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』など。