倉本 まず第一に、それぞれの国のインテリが、自分たちの国や固有の要素をレペゼンする、代表することが必要な時代だと思うんです。そうしないと「それぞれの国のローカルな事情」を誰も掬い上げずに、グローバルエリートの視点で「お前らは間違ってる」と言い続ける言説しかない世界になっちゃいますからね。
でもさらに言うと、その中でも特に、日本という国の存在がこれからの人類社会で重要な役割を持っていると僕は感じているんですよね。例えば、韓国の分断はすごく激しいものがありますよね。
――尹大統領の弾劾訴追も、保守とリベラルで賛否がくっきり分かれていました。
倉本 その分断は日本とは比べ物にならないぐらい強い。それには実は理由があって、なんせあの国はまだ公式には南北で戦争中なので、リベラルに対する保守派の弾圧が時々マジで武力弾圧レベルになっちゃうんですよ。だから左派も決して妥協できなくなる。
日本がそこまで分断が進んでなくて呑気でいられるのは、それぐらい大きな地政学的バランスの奇跡的な成果なんで、その価値をちゃんと人類社会の中での貢献に転換していくことが必要だし、世界中の人から本質的には期待されてることだと思いますね。
――最後に、今の時代に真っ当なリテラシーを養うにはどうすればいいと思いますか?
倉本 「ネガティブ・ケイパビリティ」っていう用語があるんですが、つまり「結論を急がないでいられる能力」を身につけることですね。
問題が紛糾した時に、すぐ飛びついて、「あいつはけしからん!」「これが答えだ!」と言わないと落ち着けない人が多いじゃないですか(笑)。それよりも、もっと落ち着いて、カオスな状態でも慌てずに、両方の意見や相手の存在を尊重して、すぐに結論出さずに考え続けておくことが必要なんですよ。
「あいつが悪い」って話をする前に、事情を丁寧に読み解いて解決策を探していこう…という姿勢を持ってさえいれば、誰でも「メタ正義」的なアクションは起こせる時代だと思います。
党派的な罵りあいを離れて、現象自体をしっかり読み解いていけば、どちらの思ってる正義も実現できる道は開けます。だから「どっちもどっち」から、「さらにあと一歩」進んだところに進んでいくための考え方を提示するのが、僕の提唱してる「メタ正義」的な発想なんですね。
取材・構成/高木“JET”晋一郎
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年7月号