極論ビジネスへの立ち向かい方
――そういった両極の意見でも、そこに意思や思想がある人とは、話し合うことも可能な気がします。しかしそういった状況自体をビジネスや功名に利用したり、カオスを生むこと、ハックすること自体が目的だという、思想なき愉快犯的な人も、都知事選の候補者などを見ると、少なくないのかなとも感じます。
倉本 今までの社会は、インテリやエスタブリッシュメントが全部企画立案して、それに大勢が従うという時代だったんですが、その仕組みではもう社会は回らない。だから、いろんな状況に臨機応変に、アメーバ的に対処しないといけない時代になってるんですね。
だからこそ、まずは「過去のとりあえずの権威」をすべてぶっ壊したい! というエネルギーが席巻することは過渡期的に仕方ないと思ってます。社会を人体に例えると、古い細胞を壊す細胞も必要だし、その後に新しい組織を作っていく細胞も必要だし…という感じですけど、確かに今はちょっと「壊す細胞」のほうだけが活躍しすぎて生命の危機みたいになりかけてますね(笑)。
――いわゆるがん細胞的な。
倉本 そうすると生命の危機になるので、そういう危険な細胞に食い尽くされてしまわないように、団結して頑張る必要があると思います。今まではそういう危険な存在は、排除したり無視してればよかった。だけどそうやってると「インテリとエスタブリッシュメント以外の意見は排除する」構造のままになってしまうので、そのままじゃいられなくなってるんですね。そこに「理想と現場」の「メタ正義的双方向性」を作っていくことは、例えるなら宝箱の底には大きな希望があるけど蓋開けちゃうと魔物もいっぱい出てくるパンドラの箱みたいな感じなんですよ。
でも魔物が暴れまくることで、逆に「このままじゃヤバい」と多くの人が気づいて団結する道も見えてくると思うので、悪の存在によって巨大なヒーローが生まれるみたいな感じかも知れない(笑)。
――少し話が変わりますが、著書の中には「あらゆる正義が無効化していく多極化時代に、日本人が描く理想とは」という項があるなど、日本的な考え方の、世界情勢に対する有用性が語られる部分がありますが、その部分についてもお話しいただけますか?