容疑者は「捕まりたくなかったので逃げた」「逃げているときに人をはねた」「はねる前に歩行者の男性が見え、時速60キロで突っ込めば亡くなるかもしれないことはわかっていた」と供述。いわゆる「未必の故意(犯罪結果が発生する可能性を認識しながら、それでも構わないと受け入れて行動すること)」が成立すると判断して殺人と殺人未遂、道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで再逮捕されたのである。
もし“人”とは判断せず、「逃げるときに“ゾンビ”が邪魔してきたからはね飛ばした」などと語っていたら、状況は変わっていたかもしれない。実際、祖父母や近隣住民を殺したが、それらは人ではなく“哲学的ゾンビ”という認識だったために、無罪となった事件がある。
ゾンビ殲滅で結婚の妄想で無罪
2017年7月16日早朝、神戸市北区の自宅で祖父母を刺し殺し、近くに住む高齢の女性も刺殺。さらに母親と近隣住民の女性も金属バットで襲って重傷を負わせたとして30歳無職の男性が逮捕された。神戸市北区5人殺傷事件。
容疑者だった男性は当時通っていた高等専門学校の同級生の女性と結婚するには、彼女と自分以外の存在を殺せばいいという妄想に駆られて犯行に至った。
彼と彼女以外の存在は人間ではなく“哲学的ゾンビ”との認識で、ゲームでいうところの恋路を邪魔する敵意を持ったモブキャラだったのだろう。それらを殺すのに罪悪感はなく、一審で裁判官は「統合失調症の圧倒的な影響下で心神喪失状態だった疑いがある」とし、無罪を言い渡した。殺害された近隣住民の遺族は「ただただ絶望している。何の罪もない3人の命が奪われたのに、犯人は法律で命を守られたことに到底納得できない」などとするコメントを公表した。
