SEXの、というかザ・フールズの伊藤耕さんと川田良さんと言った方がわかりやすいと思うけど、お二人に会ったことが何度かある。
耕さんとは私が住んでいたボロボロなマンションにあった練習スタジオでよく出くわしたが、そこのロビー(というにはあまりに狭い空間)で自分がベースを弾いて遊んでいたら、そこに耕さんがやってきて「ヘイ、ブラザー!いいビートだ!」と声をかけられ、園場でドラムなしでスタジオの店員のSさんと一緒に耕さんとセッションさせられることになった。あの時はあまりのことに本当に驚いた。だって、俺が耕さんとセッションとかおかしいでしょ。
良さんとはそれより少し前の時期に下北沢の「すりこみ屋」というバーでいっしょになることが多かった。良さんはそこでよく若者に議論をふっかけて泣かしていた。自分とも議題は忘れたけど議論になったが決着がつかず、良さんが物理的に私をひっくり返したため、私は椅子から落ちて床に転がったのであった。良さんといえば「ケラさん逃げて!」事件の当事者であり、ケラさんもあやうく物理的にひっくり返されていたかもしれない。
でも、本当にでたらめで怖かったけど、良さんと話をするのは面白かったし、めんどくさいけどなんか好きだった。午前四時、ホント好きなんだよな。
自分が東京ロッカーズ周辺で今もよく聴いているし、一番好きなのは自殺と解散後にボーカルの川上浄が結成したコックサッカーズだ。
自殺のThe Stooges的プロトパンク。コックサッカーズのよりルーズなロックに回帰したサウンド。力強くも時としてよれよれな川上の歌声は両バンドを通して変わらない。
どうしてそうなるのかわからない身も蓋もない歌詞、ライブで自分の書いた歌詞をおぼえてない、いい声なんだけどどこかヘロヘロでダメさが漂う歌声。それら含めて本当に好きだ。いや、だからこそいい。何がいいとか人に説明できないし、これをいいと思う人もあまりいないかもしれないが、本当にいい。
ダメな男のどこか間違った精一杯のカッコつけ。本当にどうしようもなく、たまらなく切なく、ダメさがダメのまま輝き、意味なくかっこいい。
一番で出来のいいものが一番好きなわけではない。川上浄は成功したわけでもないし、後世でも評価されることもないかもしれないが、そんなことはどうでもよく、川上浄の歌声を聴いていくだろう。多分、今日も。
〈金曜連載〉
画像/『東京ROCKERS』
『みいちゃんと山田さん』について思うこと:ロマン優光連載368
2025年振り返り:ロマン優光連載373
「初恋サイダー」カヴァーの系譜:ロマン優光連載367
ロマン優光(ろまんゆうこう)
ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『嘘みたいな本当の話はだいたい嘘』『90年代サブカルの呪い』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。
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