柳沢きみおの『悪の華』の主人公・津島研一郎は芸能事務所の社員だったが、社長の頼みで2億円と引き換えに大物芸能人の身代わりとして麻薬取締法違反で逮捕される。出所してきた彼は婚約者が社長に奪われていたことを知り、何かにとりつかれたように芸能事務所を立ち上げる……。
テレビの前のおじさんがゴシップ週刊誌の記事だけをソースに脳内でつくりあげた、麻薬と暴力であふれかえるゲスな妄想芸能界を舞台にした復讐譚と言いたいが、大筋の物語は本当に身も蓋もないひどいことが起こり続ける。スキャンダルで干され拒食症に苦しんでいた有名アイドルと出会い、立ち直らせて復帰させたら今までの不摂生がたたって彼女が急死するという展開に、我々は何を言うことができるのだろうか……。
「主人公が女と会う(あるいはスカウトする)→セックスする→死んだり、不幸になる」という繰り返しで物語は進行するが、主人公はいつも一瞬悲しむだけですぐに他の女とセックスする。
多数のわき役が登場し、その多くが主人公由来の不幸にあうのだが、いつのまにかフェイドアウトしている。作者が忘れている、めんどくさくなって放置しているためだと思われるが、これによって主人公が情のない人間に見えてくる。
全編とおして自分のことしか考えていないよう男として津島は映るようになっている。
作者の意図した要素と意図してない部分から生まれる違和感が絶妙にブレンドされた結果、生じる鬼畜感がたまらない柳沢作品らしい主人公である。
最後はちばあきおの名作野球漫画『キャプテン』から第二部主人公の丸井の名をあげておこう。
首をかしげるかたもいるかもしれないが、よく考えてほしい。
丸井という男は前キャプテン・谷口くんに媚びることだけが生きがいで、自分のいたらなさを棚に上げ、後輩にパワハラと暴力をふるい続ける最低の男でしかない。谷口くんが好きなら人格も見習いなさいよ! こういうやつが部活の先輩や上司だったら殺意がわいてくるだろう。子供の頃も不快だったが、今読むとさらに許せない気持ちが増大。鬼畜・丸井、本当に許さない!
丸井の場合は当時としては性格上の欠点レベルだったものが時代の変化とともに許されない度がアップしてしまった例であるが、こういうこともある。
それはともかく、私は子供の頃から丸井は大嫌いだし、未だもって彼が嫌いなのである。

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文/ロマン優光
画像/『キャプテン2』(1)(コージィ城倉、原案:ちばあきお/集英社)
初出/『実話BUNKA超タブー』2026年5月号
