昭和最後のドン・ナベツネ
「メディア界のドン」「政界のフィクサー」と呼ばれ、長らく読売新聞に君臨してきたナベツネこと渡邉恒雄がとうとう逝った。新聞業界だけでなく政界やスポーツ界にも絶大な影響力を行使し続けた独裁者の死は、まさにオールドメディアの終焉を象徴する節目となりそうだ。
ここ数年は体調不良もあってほとんど取締役会に出席することはなかったが、株式会社読売新聞グループ本社代表取締役主筆として最後まで権力を手放さなかった。読売社内には「主筆室」なる専用の部屋が用意され、完全禁煙のはずの社内で唯一、葉巻をふかしながら仕事をしていたという。
ナベツネは1926年生まれの享年98歳。東大卒業後に読売新聞に入社し、政治部記者として数々の大物政治家たちと密接な関係を作り上げ、政界のフィクサーとして暗躍。その影響力を背景に読売新聞を発行部数1000万部という世界でも類を見ないほどの巨大メディアに育て上げた。
こうした業績からナベツネを偉大なメディア人と評するムキもあるようだが、これはトンデモない話だろう。記者としての能力が高かったのは確かだが、その本質はジャーナリストではなくズブズブのフィクサーであり政界のプレイヤーである。現代の大手メディアは「マスゴミ」と呼ばれ大衆からの信頼を失いつつあるが、その悪しき側面の大元であり、日本のメディアを腐らせた張本人こそ新聞業界のドンだったナベツネなのだ。
「昭和の時代から日本には社会に害悪をまき散らす3人の“ドン”がいると言われてきました。創価学会の池田大作、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川、そしてナベツネです。この中でも大衆の生活に最も大きな影響力を持っていたのがナベツネです。まさに戦後昭和史に残るレベルの悪しき権力者でした」(全国紙デスク)
そんなナベツネの原点となったのは10代での強烈な体験だ。