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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』と『花束みたいな恋をした』:ロマン優光連載288

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ここに書かれているような労働の問題を漠然と考えている人(特に深く堀って考察する必要までは感じてない人)も存在していて、そういう人はこの本を読む必要はないと感じる場合も多いだろうし、読者として想定されているわけでもないだろう。ただ、そういう人にとっても目新しい発見はないが、自分の中の解像度を上げてくれる部分はあると思う。

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強い言葉の使用や頭ごなしの否定を避けた表現

歴史的な流れを追う中でテーマをわかりやすくするための取り上げる事象の取捨選択は当然行われている。読む人によっては、ここに書かれていないことの中に時代ごとの読書のあり方に関わる重要な事象を見いだすこともあるだろう。

新書の持つ入門書、概略を示すガイド本という役割を考えれば「あれがない、これがない」みたいにいうのは少し違うのではないかと思うし、読んでいて気になったところは個人で掘っていけばいいだろう。

読む人の年令や読書経験によっては「なんで、こんな当たり前のことをわざわざ書いているんだ」と感じる部分もあるだろう。正直、自分にもあった。自分が実際に生きていた時代(自分は72年生まれ)に関する分析の中には微妙に違和感がある部分もあるといえばある。しかし、世代の違い、同時代を生きていたとしても体験や環境の違いによって、そういった部分が生じるのは当たり前の話だし、とりたて何か言うようなほどのことではない。また、そういったことを知らない人を読者に想定して、そこに向けて説明するために書かれていたりする部分もあり、これを著者が無知であると解釈するのも違うだろう。

読んでいて思ったのが、誰かを否定することを避けることに非常に自覚的な努力がされているということだ。全く、何かに対する批判的な記述がないわけではないが、できるだけそうならないように細心の注意が払われている。参考文献の中での70年代の司馬遼太郎作品のサラリーマン需要についての考察に対して、それだけではないのではないかという疑問は提示するが、そこから批判に発展することはない。「この論の進め方だと、○○についての批判に繋がるのでは」と思わせるところはいくつかあったが、特にそういったところに踏み込むことはなく、疑問の提示、問題提起に止まっている。

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