『荒くれKNIGHT 黒い残響 完結編』は吉田聡の『荒くれKNIGHT』の主人公が属するチーム・輪蛇のライバルチームである虎武羅の黎明期を描いた前日譚にあたり、絶対的な神話である輪蛇の物語を通しては描けなかった敗者の美しい物語がそこにある。
歴史に名を残さなかった男たち。あらかじめ敗れ去る運命が決まっている男たち。しかしなにものにも劣っていなかった愚かな男たちの物語のなんと切ないことか。
稀代の大悪党だった主人公・大鳥大悟を導いたのが赤蛇や青蛇のような神話的な人物ではなく、真っすぐな気持をもった少しばかり喧嘩が強いだけのネギ先輩という「人間」であったこと。それがある意味この物語の全てだ。
愛すべき連中との沢山の別れを経てたどり着く大鳥の「オレは……愛されていたんだ」という言葉を前にするたびに視界が滲んで何も見えなくなる。
江野スミの『亜獣譚』はこれまで紹介してきたものとは少し毛色が違うかもしれない。
「害獣病」と呼ばれる、発症すると異形の化け物になってしまう奇病が蔓延する架空世界を舞台にした作品であり、ダークファンタジー的な物語の中で性にまつわる様々なことが直接的に、あるいは隠喩として描かれた作品である。
性に対する様々なものを描くことはその人の「愛」を描くことでもあり、なにかしら過剰だったり欠落している人々の歪んでいながら切実な性と愛の形を描いたこの物語の最期を飾るヒロインの言葉は非常に優しく美しいものだ。
なぜ泣いてしまうのか、それぞれ理由は違うが、どの作品も物語の最後に大きく感情が揺さぶられるという点では一致しており、私にとって「純粋に泣ける作品」とはそういう作品なのだろう。

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文/ロマン優光
画像/『フルアヘッド!ココ』(2)(米原秀幸/秋田書店)
初出/『実話BUNKA超タブー』2026年9月号
