90年代はゲイが輝いていた時代
たとえばニューヨーク・タイムズは《活動家たちに話を聞いたところ、與ほどのステータスのある日本のポップスターがゲイであることを公表した事例は記憶にないという》など、明らかな嘘を確信犯的に報道する。マツコ・デラックス氏やミッツ・マングローブ氏はゲイの女装家だが、彼らをテレビで見ない日はないし、ノンバイナリーをカミングアウトした宇多田ヒカル氏をはじめバイセクシュアルのカズレーサー氏など、過去にも大勢のLGBTが活躍していることは周知の事実だ。わが国には欧米のような禁忌はないからである。
また、新宿二丁目でゲイバーを4軒経営する江口康彦氏は、『GQ JAPAN』のインタビューを読んで怒りが収まらなかったという。
《20年くらい前ですから、ゲイという言葉も知らなかったし、いまみたいにインターネットで知識を得ることもできない。テレビのバラエティでは、『オカマ』や『ホモ』は笑いの対象でしかなかった。誰にも相談できず、自分はおかしいんじゃないか、自分のような人間は世界にひとりしかいないんじゃないかと思っていました》と述べる與氏に対し、90年代後半、日本で初めて海外からEDM系DJを招いて1000人規模のゲイナイトを主催していた江口氏は、「あなたがゲイという言葉を知らなかった20年前のゲイナイトには、倖田來未もMISIAも出演してくれました。エイベックスのアーティストが20年前はゲイという言葉を知らなかったとか、どんだけよ」と苦笑する。